[*]Keep your feet

Date: Sun, 8 Feb 1998

足もとに「足もとにご注意ください」という警告看板があるのはおかしい。その看板に気づく時には、すでに、足もとを見ていることになるからである。看板それ自体が存在を誇示することによって警告を発しているのだろうか。と考えられなくもないが、実際、本来注意してもらいたい「足もとを気にしない人」は、おそらく、この看板に気づかない。言うまでもないが頭の上に「頭上に注意」とあるのもおかしい。

私は別に足フェチではないが、人の足もとを見ていることが多い。足もとを見ると言っても、弱みに付け込もうとか、あげ足を取ろうと思っているというのではない。

顔を見て、目と目があったりしたら照れるし、どのみち、近頃の人にはスイッチ切り替えで、笑顔・無表情(デフォルト)・ムカツクの3種類くらいのパターンしかないし、同じようなメイクやヘアスタイルやファッションなので、目の前に居る人と、さっきすれ違った人との見分けが付かないのであまり面白くないだけでなく、こわい。

でも、別に私は、足で人の識別ができる能力を持っているわけでもなく、足もとも、みんな同じようなファッションでかためられているので、ますます持って個性は消える。いや、それゆえに純然と客観的な意見が述べられそうな気がする。というのは今作った屁理屈である。

ルーズからハイソへのシフトが起こりつつあるという記事をトレンド雑誌だかエロ雑誌だかで見たのはずいぶん前なのだが、私の現在の生活圏内では明確なシフトは見られず、むしろ、ほとんどがルーズである。レッグウォーマー的なスタイルと冬の寒さが味方して、手放されて(足放されてか?)ないのかもしれない。でも、こないだ新聞を見てたら、取材を受けることを狙った紺ハイソの娘が渋谷109の下には結構いるらしい。ひょっとして109の麓のみの、日本一豪華な地方都市東京ローカルな流行なのだろうか。などと勘繰ってしまう。時代はディテールだから、それもアリだろう。

先頃、ハイソ組に転向したJR東日本の車内広告マナー向上委員会のJ子ちゃんの足もとはどうなっているか気になってJRに乗る。2月版のJ子ちゃんには足もとの絵がなかった。残念である。しかし、それ以上に気になるのが、今月のJ子ちゃん、乗車マナーの話をせずに、駅や車内の英語表記といったJRの広報担当になって外国人のお客さんの接待をしてしまっているのである。
「J子ちゃん、君はいつからサービス向上委員に変わったんだい?」

女子高生が記号化(いや、本当は記号化しているのは、高校生の女の子だけではないのだが)しているのは、うすうす誰もが気づいていることと思う。そのために、本来の記号の文化であるマンガ表現でも、現実が記号化してしまったせいで、マンガの表現が貧困になっていたのではないかと思われる。現在、マスコミ的にはソックス文化が過渡期であることになっているので、その辺どうかとコンビニでいわゆる青年マンガ誌をチェックすると、意図的に足もとの描写を減らしてたり、登場人物を適当に白や紺のルーズとハイソと普通の靴下を混ぜて配置してたりする。マンガ家さんも難儀ですね。

ルーズにはルーズのきちっとした履き方があるのと同様、ローファーもちゃんとかかとをつぶさずに足をしっかり入れて、颯爽と歩いていただきたい。どうしても足音が、「カッ、カッ」とヒールの利いた音ではなく、「ズッ、ズッ」と引きずったり、つっかけた歩き方をしている子をよく見かける。が、別に私は生活指導の先生ではない。私が学校の頃、先生に「靴のかかとを踏んで歩くのは、自分で稼いで買ってからにしなさい」と習ったので複雑な感じがする。もっとも、彼や彼女らはバイトで稼いで買ったのかもしれない。

「あなた、花魁さん?」と聞きたくなるような、底の分厚いブーツを履いて歩く人々も、なんだかドタドタと粗野な足音を立てる人が多い。太股、膝、下腿部の振り出しがすごく不自然で、あの靴は「気を付け」用であって、「前に進め」用ではないのではなかろうか。まるで現代の纏足である。いうまでもなかろうが、この手のブーツの人のスカートやトップスやロングコートは制服化しているので、私には個人の区別がつかない

そんなゴツいブーツを除くと、男の靴に比べると、女の靴は小作りである。だからこそ、ちゃんと御自分の足に合わせた靴を履いていただきたい。歩くたびに脱げかかって、かかとの裏が体重にいじめられて赤くなっているのが見えたり、電車で足を組んだはいいけど、靴は爪先にひっかけてプラプラとさせているのは、美人不美人を問わず不細工認定したい。

となんだかブツブツ言う私がかっこいいかというと、そんなわけがなく、ブツブツと分裂病質気質な人にありがちな、年がら年じゅう、同じようなダサダサの格好をしていても平気の平左であるからして、そんなやつに服装に文句つけられても、おそらく超ムカツクかout of 眼中であろう。

---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------
当時の本 『ショートカッツ 1』古屋兎丸(ヤングサンデーコミックス,900円)女子高校生が記号であることを知っている人も知らない人も、必見である。
当時の世 長野五輪が始ったらしい
当時の私 遠く信濃国の出来事にはあまり興味がない。

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