[*]What's festival?

Date: Sun, 26 Jul 1998

出張で愛知県豊田市に行きました。トヨタの城下町です。ダイハツだと、大阪府池田市ダイハツ町と町名になる程度ですが、トヨタほどになると、市の名前になったりするようです。鈴鹿市なんかは、ホンダ市になりかけたそうですが、宗一郎さんが「社名をホンダにしたのが失敗だった」と言ったりしたそうで、そういうことにはなってないと聞いたことがあります。

偶然なんですが、日曜日は豊田市では「おいでんまつり」とかいうのが開催されていて、すごい人出でした。宿泊先に向かう電車の中でも、やたらと浴衣姿の人を見かけるし、駅では「お帰りの乗車券をお買い求めの上、おでかけください」などと言ってました。

「花火の前に、焼きそばとビールはいかがですか。」とすでに夜店(まだ夕方だけど)が声を張り上げてます。その横では、ミニのボディコンのワンピースに身を包んだバドガールみたいなおねえさんがビールの販促活動をしています。私は、こういうのが苦手なので、手前の交差点で反対側の歩道に移ったりします。

とりあえず、宿泊先に着きました。部屋のカギが壊れていて開きません。フロントにて
私「あの、部屋の扉がうまく開かないんですけど…」
従業員「・・・・・」と曖昧な笑顔で小首をかしげる。
私「カギを回しても、とびら開かないんですけど…」
従「カギを回しながら、ドアを押せば開きますが」
私「回しながらって、クルクル回ってしまうんですけど…」
従「少々お待ち下さい。」と怪訝な顔をしながら一緒に部屋へ行きました。
どうやら、カギのシリンダーの遊びが大きくなり過ぎて、押し付けながら回さないと、クルリと回ってしまうようでした。
従「お手数ですけど、このように(と実演)奥に押し込みながら回していただけますか?」
開けるのにコツがいるような部屋に当たってしまって、入るまでに一汗かいて格闘してしまいました。そして、荷物を下ろして、出掛けました。

流行ってるのか?コレ。

今日の晩飯はどうやら、夜店で調達って感じです。フランクフルトや焼きそばの店は、結構、行列です。広島焼きってのはわからんでもないけど、大阪焼きってのにはどうも違和感があります。イカ焼きの店なんか見ると、一応、関西人の私は、「それは”焼きイカ”やっちゅうねん。イカ焼きちゃうやろが」と無言のツッコミをします。

日が暮れ始めると、花火もドンドコドンドコ。きれいです。低い音が腹に響きます。「こんどこそ節酒しよう」と思ってたくせに、しっかり夜店で「一番しぼり」を2本仕入れて飲んでしまいました。

花火はドンドン上がります。人はドンドン増えます。このままでは観覧席まで流されてしまって、帰れなくなりそうです。周りはほのぼの家族連れと、軟派な男と、浴衣か近頃流行のお肌の露出度の高い服装の女ばかりに見えてしまいます。

いわゆる、日本の祭りってのは、意識的に「非日常」を導入する儀式だと聞きます。(「ケ」(日常)に対する「ハレ」(非日常)だっけ?)いまいち乗り切れない、ぼくは人波を逆流します。観覧席に向かうカップルの彼女が言います。「今の時間から駅に向かって歩くと変だよねぇ」私はその変な人です。花火がキレイなのはわかりますが、そこまでみんなが盛り上がるのが分からない私です。出張の日程の一部であるせいもあるのかもしれませんが、ぼく自身のノリの悪さだとも言えるでしょう。「ケ」と「ハレ」のメリハリがないのです。

人込みに当てられて、部屋に帰ると、お風呂の配管から花火が響いてました。

---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------
当時の本 『クリック』佐藤雅彦(講談社,1300円)ポリンキー ポリンキー 三角形の秘密はね おしえてあげないよ。超短編小説集。
当時の世 夏祭り。
当時の私 日々勉強。知らないことはいっぱいある。

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