Whiskers didn't workDate: Mon, 21 May 2001
かれこれ一週間放っておいてみたのだが、なんだかヒゲの体をなしていない。いや、ちゃんとトリミングして手入れしてあげないといけないのかもしれない。「髭を蓄える」などという言葉があるくらいだから、ちょっとくらいでは「蓄え」はできないのかもしれない。それにして、なんだか生え方がまばらで、不精髭の見本みたいである。
ヒゲが生えてると、なんだか偉そうである。でも、ヒゲが生えるだけで偉くなれるなら、みんなヒゲを生やしているはずだ。千円札の漱石さんのヒゲを砂消しゴムでも使って剃って見たくなる。紙幣変造の罪に問われるかもしれないので、止めておく。でも、やはり、これは、ポーズというか虚勢というか、そういうのだったんじゃないかなぁ。と思う。 こう見えても(と言っても、文章だけでどう見えるでもないのだが)、私はあんまり肌が強くない。あっさりと剃刀負けしてしまう。プロテクター3Dは不慮の横滑りによる切り傷を防いでくれるが、剃刀負けまでは防いでくれない。というか、少し長くなるまで放置した不精髭は、プロテクター3Dをあっさりと目詰まりさせてしまう。実は2Dタイプ(プロテクター)の方が目詰まりしにくい。私の顔はかっこよくないが、かくいので、2次元の自由度があれば十分である。多少エラの張った辺りの回り込みが難しい。しばしば、「切れてな〜い」でなくて「剃れてな〜い」になる。 散髪屋に行って、念入りに顔剃りをやられてしまうと、翌日は、なんだかブツブツと出てくる。今度はカットだけのコースにしようか。数百円は安いはずだし、どうでもいい会話に付き合う時間も減るに違いない。ついでに、洗髪も省略するといいかもしれん。「どこかカユイとかありますか?」「いや、ちょっと頭の中が、、、」「はい?」「いや別に」 「お客さん、癖っ毛だから、朝、なかなかまとまんなくて大変でしょう。ご両親のどちらか癖毛なのかしら。でもくせ毛だとハゲないからいいですよねぇ。」何故に両親のことまで詮索するのだ、おばちゃん。くせ毛はハゲよりどうして良いといえるのだ。確かに、うちの父は私より強力なクルクルの天パである。だが、そろそろ還暦の彼は、しっかり頭頂と額の生え際が薄くなっているではないか。父上はどうしたらよいのだ。 白髪も多分、遺伝である。両親とも若白髪があったと言っていた。まぁ、いいかげん「若」白髪というには歳をとってしまったような気がする。コンビニで高校生の男の子が、壁の鏡を見ながら髪を整えつつ、「超〜ショック!白髪発見。まじでやべぇよ〜」などと叫んでいる。そんなら、私は小学生の時から超ショックである。もっとも当時は「超」と言えば、「特急」か「合金」しかなかった気もする。 若い頃の母は、散髪屋さんのおばちゃんに「白髪なんか抜いてしもたら、ええのよ」と言われて、せっせと抜いていたら、毛母細胞が足らなくなったらしく、今では毛が足らんとぼやいている。先日カツラを買ったらしい。でも、うっとうしいのであんまり付けないらしい。実家に帰るたびに「あんた白髪減ったなぁ」と言う。当の本人は、減ったとか思ってないし、あんまり気にしてないのだが、なにか気になることでも隠しているのであろうか。 父の方はというと、彼が言うには、結婚したら白髪が一時期減ってクログロとした髪が生えてきたらしく、「やっぱ、ホルモンのバランスがやなぁ、、」などと嘘くさい素人薀蓄を展開する。しかし、白髪解消のために、結婚するのでは、あんた、戦国時代の政略結婚よりもタチが悪いぞ。それに、いずれ歳はとるもんだし。で、追い打ちをかけるように、母が言うのだ。「なぁ、あんた東京に、ええ人おらんのん?」そんなことだから、実家に3日もいるとツッコミつかれてイライラするのである。 先日、コンタクトを入れて帰省したら、うぶ毛がしっかり生えそろってるのが見えたりして、母に「ヒゲ生えてるぞ」と、つっこんだら、「そんなん見えるようにならんでよろし」「よその人に言われるよかええやろ」彼女にわかに剃刀を取り出して、慌ててやるものだから、鼻の頭を切っていた。「ちゃんと横滑りガード付きの顔剃り用の剃刀買いなさいっての」「へぇ、そんなん、あんのん?あんた変なこと、よぉ知ってるなぁ。」まったく。真実の愛が見つかるまでヒゲを剃らないと決めたのはヒゲのOL藪内笹子(by しりあがり寿)である。 不精髭の見本のように、ちょこっとだけ伸びた自分のヒゲを見ながら、こんなショボショボなヒゲでも、頬ずりしたら「痛いのよ、ヒゲが」と、どこぞのシェービングジェルのCMの赤ん坊みたいな台詞が出てくるのだろうか。そういや、結婚して子どもつくって、ヒゲ生やして頬ずりして痛がらせるのが夢だと言ってた奴がいたが、彼はちゃんと幸せな家庭を作ってるのだろうか。私も幼い時に父にやられたが、まだツッコミができなかったので、「痛いのよ、ヒゲが」とは言えなかった。 んん、ヒゲにも白いのが混じるようになってきたなぁ。白目も濁ってるし。ちゃんと歳はとってるなぁ。でも、あんまり渋くないなぁ。どっちかいうと、気分的には若返ってるような気がするのだが。なんて発想するのが、もう、くたびれている証拠ではなかろか。とりあえず、一週間分のヒゲあたるか。ちゃんと生きよう。
---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------ |