[*]安全な剃刀

1997/10/14

洗面所で髭を剃っていると、後ろに郵便配達人のような人が立っている。不意に攻撃を加えられそうになって、とっさによける瞬間、剃刀が横滑りする。即座に反撃して敵をやっつける。剃刀は横滑りしたけれど、頬は「切れてな〜い」

というCMでおなじみのマイクロセイフティワイヤ付きの剃刀である。

だいたい、洗面所にまでやってくる郵便配達人はすでにその時点で怪しいし、おまけにそいつが暴漢で、襲いかかってくるなどという状況は平和な市民生活者にはおそらくないだろうと思われる。おそらくないと思われるようなタフな状況でも「切れてな〜い」くらいに安全だと訴えたいのかもしれない。

たとえ横滑りしても皮膚に刃が入らないように細いワイヤでガードするのだ。単純に硬さを問題にするのなら、皮膚と毛では断然、毛の方が硬い。硬いものは押し切れるが、軟らかいものはうまく刃が横に滑って入らないようにすると、その弾力で逃げることができるのであろう。

このワイヤの太さ、そして間隔の仕様をfixするために、開発チーム自らがモルモットとなって、おそらく多くの犠牲が払われ、血が流されたのであろう。それとも、モニターのバイトのにいちゃんを募集したのだろうか?

なるほど、多少の横滑りでは皮膚を切ることはない。しかし、如何せん。多少エラの張った私の顔は、ちょっと剃刀の回り込みに失敗し、しっかり流血してしまったのであった。

[目次へ戻る]