[*]Winter has come

Date: Sat, 6 Nov 1999

ずいぶんと冷えてきました。考えて見れば、いまの部屋に越してきたのが2月だから、冬支度は初めてということになります。

久しぶりに土曜日の昼間に部屋でのんびりしていると、真昼だというのに太陽の光が部屋の奥まで差し込んできます。私の部屋は南向きです。奥まで差し込んでくるってことは、太陽の南中角度が低いということです。
「お、冬だな。」
と思いました。

今の私の生活様式では、自室は布団つき倉庫であって、生活の場ではありません。休日を部屋で過ごすには、機能的に不全なところがあります。

布団から出ずにモゾモゾしながら、周りを見回すと、本と雑誌と、空き缶と空きビンと、ゴミと、脱ぎ散らかした服と、結局引っ越し以来開けていない段ボール箱の、峡谷の狭間の盆地に布団があるという様相です。

それにしても、段ボールはどうして、「段ボール」という名前なんでしょう。段積みする箱だからでしょうか?ボール紙を層にして作ってるからでしょうか。そもそも、ボール紙ってなんでそんな名前なんでしょうか。いや、そんなことは知らなくても、たぶん、生きていけます。

さて、なぜ、布団から出ないのかと言えば、「寒い」からです。いや、断じて、ひとりボケがすべって寒いのではありません。唐突ですが、私は、エアコンのフィルターを掃除をすることにしました。不精な私がエアコンを掃除しようと思い立ったのは、先の謎を考えているうちに
「段ボール、ダンボール、だんぼうる、だんぼうする。暖房する。なるほど。」
と、おなじみ思考の地滑りが起きたからでした。

フィルターを掃除しようとして、ふと、「これって、一般的に、掃除機でブォーって吸わせて掃除するんだよな。でも、掃除機ないぞ。」と思いました。なにせ、偽フローリングの上はクイックルワイパー。毛布やシーツの上はコロコロで事が足りるし、ぼくの部屋は散らかって平坦なところがないので、掃除機はオフロードかクロスカントリー仕様でなくてはなりません。

仕様がないので、風呂場にフィルターを持っていって、裏側から熱湯のシャワーをかけて掃除しました。けっこうきれいになりました。風呂場に来たついでに、風呂掃除もすることにしました。あらためて、「最近、シャワーばかりで湯船にゆっくり浸かってないな。」と思いました。ぼくは、その日の晩は、ちゃんとお湯を張って、バブ[森の香り]を入れて風呂をつかう決意を固めました。

調子にのって、お湯を沸かすくらいしかしない台所と、日頃お世話になっているトイレも掃除しました。一通り終えても、まだ低い太陽は沈んでませんでした。ぼくは、居室の片付けもすることにしました。

まぁ、狭いところに縮こまってる方が安心感があると言えばある。小さい時にただでさえ、散らかして狭い部屋の中に、わざわざ、実家の店の商品の入っていた段ボールで仕切りを作って、秘密基地と独りごちていたのを思い出します。それでも、現状は狭くなりすぎて、かえって肩凝りを誘発してるのではないか。という疑いがあるのでした。

とりあえず、「これはゴミだ」と思えるものをどんどん拾って行くと、ゴミ袋が4つも出来てしまいました。明日の朝、この4つのゴミ袋をぶら下げて、決められた集積所までの出勤途中の道のりを行くのはなんだか、こっぱずかしいので、2、3日に分割して出そうかなとつまらないことを考えます。

おかげさまで、部屋が体感2倍に広くなった気がしました。一仕事終えたぞ、と、プシュッ!プシュッ!と開けてしまったので、またゴミが増えました。

予定通り、森の香りのお風呂に入りました。ですが、私は本当の森の香りを知りません。知らなくても、たぶん、生きていけます。ちゃんと肩まで浸かって、ゆっくり100数えて出てきました。

すると、部屋が寒いのです。暖房をかけてても、風呂の出口が寒いのです。風呂の出口の前は、本来、冷蔵庫を置くためのスペースです。私は、結局、この夏を冷蔵庫なしで越してしまったのです。ですが、「そうか、冷蔵庫の熱交換機の放出する熱で部屋を温めるって寸法だな」と、なにの寸法だか、よくわからないことを独りごちていました。

どうして、風呂には「風」という字が入ってるのでしょう。いかにも、寒そうな気がします。小さい頃、親の田舎で母屋から離れた風呂場まで歩いて行ったのを思い出します。でも、「呂」はどうみても「呂」だろう。私は風呂以外に「呂」の字を使っているのを、登呂遺跡か、ジャイアンツにいた呂明賜でしか見たことがありません。(というのは少しウソです)

「風呂屋」と看板にあっても、銭湯の場合と、風呂桶屋の場合とがあります。たぶん、気をつけなくても間違いません。風呂桶屋の前には「ゆ」と書かれたのれんも、煙突もないでしょうから。

湯船は船のくせに、船内にあらかじめ浸水しています。
「さて、問題です。せっかく船を新しく作ったのに、進水式と共に、沈んでしまいました。なぜでしょう」
「こたえ:潜水艦だったから」
に近いものがあります。

部屋を片づけると、地層の中から、買うだけ買って、読んでない本が何冊か発掘されました。寝る前に、これを片づけようかと思います。

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当時の本 『自分の頭と身体で考える』養老孟司×甲野善紀(PHP研究所, 1400円税別)解剖学者と古武術師の目で見る世間。
当時の世 冬のようだ。
当時の私 最近、主食が、Spa王から、永谷園のお茶漬けと、井村屋の肉まんに変わったらしい。

クイックルワイパーとバブは花王の、コロコロはニトムズの、Spa王は日清食品の商標です。たぶん。

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