Date: Sat, 09 Jan 1999
Tue, 09 Jan 1999 記
ヘロヘロな面持ちで不動産屋に向かう私であった。
以前、「住もうと思う駅を決めて、その駅に行って、近所の不動産屋で話して、すぐ決めた」という先輩の話を聞いた私であるが、今回、それを採用していない。それが良かったかどうかは分からないが、いざ、自分が部屋探しをするとなると、「案外、不動産屋って、駅の近くにやたらとあるなぁ」と思っていたのであった。
時々、仕事を休んじゃったりして、平日の昼間の電車に乗ったりすると、乗客の構成が普段と違って興味深い。普段は通勤通学の人々しか見てないから、「ふむふむ、普段、ぼくが会社にいる時間にも、こんなにたくさんの人々が電車を利用しているのであるな。こうして動く人がいるから、世の中なりたっているのであるな。」と勝手に納得したりする。
電車の中で年配の女性二人連れが楽しそうに会話している。「うむ、女の人は、いくつになっても、か〜るくお喋りモードに入れるのであるな」とひとり納得している私。「そろそろ溝ノ口かしらね。」(おいおい、次は宿河原だぞ。3つくらい過ぎてるのと違うか)と心の中でつっこむ。「どれどれ」とぼくが立っている乗車口の上の沿線表を見にくる。「あら、やだ、もう、ずいぶん溝ノ口を過ぎちゃってるわよ」「まぁ、あら、やだ。そう、あははは」どうやら、彼女らはお喋りに夢中で目的駅を乗り過ごしたらしい。ぼくは、彼女らが折り返すであろう次の登戸駅で一緒に降りた。
フラフラな頭で、お店にたどりつく。
「こんにちは。いらっしゃいませ。お電話いただいてますか?」
「あ、はい。」しばらくして担当の人が出てくる。
「お部屋探しははじめてなんですよね。」
「ええ」
「お電話でもいろいろ、ふつう聞かれることのないこと質問されてたから」
「はぁ」
「で、ですね。お報せいただいた条件で、おすすめな所で、2、3紹介しますね。」
と、間取りの図面と、写真とが入ったファイルを見せてもらう。(なんか、こっちが口を挟むヒマがないな)とちょっと思う。
「お勤めの場所の駅とすこし離れてるみたいですけど、なにかご希望ございます?」
「なんていうか、その、ぼくは、通勤電車に乗ってるうちに、なんとなく、行きしなに今日も仕事やろうかな。とか、帰りしなに今日の仕事はおしまい。とか、って気分をジワジワ変えるもんで、あまり近かったり、あまり混んでたりすると、その辺がうまくいかないんですよ」と訳の分からん説明をする。
気分としては、通勤時間があまりに減ると、
・反動で勤務時間が増えちゃうかも
・通勤ネタを拾えなくなるな。
・通勤読書の時間が減るな
辺りが本音であろう。
「あの、このおすすめ以外のとこの資料なんかも見たいんですけど」
「そうですね。こちらに図面のファイルがございますから、見ながら、お気に入りの部屋がありましたら、このしおりをどんどん挟んでっちゃってください」
と言われて、大きなファイルが出てきた。そのファイル一つだけで、沿線の駅沿いの物件が多数乗っている。川崎方面に上っていくと、どんどん家賃が高くなっていきそうだった。
ぼくは、チラチラと見ながら、しおりを挟んでいく。その時、あらためて、ぼくは、
・今の部屋よりは広いこと
・家賃は7万以下
・職場の最寄り駅から5駅以上
・いくらか収納があること
という条件で見ている自分に気付く。担当の方はしおりを挟んだ物件の管理会社に電話して最新の図面と、鍵をあずかってる不動産屋をチャッチャと問い合わせている。(ふ〜ん、この辺りの手際がこういう商売の売りなのかな?)と思ったりする。
一通り、希望の物件の資料が集まったので、物件を見に行くことにする。車に乗って拉致られる。幸い、アイマスクやヘッドフォンはされてない。ぼくが希望した沿線は、何度か「歩け歩け大会」で歩いたことがあるので、少しは分かるが、なにせ、こちらは骨抜きのペラペラのペーパードライバーであるから、車で連れていかれると、どこがどこやらわからない。
道すがら、担当の人の、「タイル張りのパターンとか色に、その時々の流行り廃りがあるから、見てると、いつ頃建ったマンションだな。ってのが分かる」とかいう小話を聞きながら、「ふ〜ん、おもしろいな。」と思っていた。
「この辺り、来られたことあります?」
「え、まぁ。通勤の途中ですから、時折、途中下車してウロウロしてみたりしたことはあるっす。」
「そうですか。土地勘まったくないって方、けっこういるんですよ」
「でも、車では走らないから、もう、どこ辺りを走ってるのか、ぜんぜんわかんないですよ。まわれ右してみたら。見たことのあるアングルの風景で、「そうか、ここか、ここか。」って感じっすね。」
2件ほど見にいったあとの3件目、なにやらこじんまりとしたアパート?っていうか、コーポ? 裏手に大きなおうちが建ってるから、ここが大家さん?なんか離れの代わりに建ちましたって感じかな。という物件にであった。
床はフローリング風のシート材が貼ってあって、エアコンとコンロは初めからついていた。お風呂とトイレは別々。実家のそれよりは広い。資料には 23.19平米と書いてあるが、ぱっと見、寮の部屋よりは広そうだ。収納はまぁ、寮の押し入れ程度だから、洋服ダンス分はどこかにはみ出ることになるけど、いい感じだな。と思った。
「なんか、広く見える感じがしていいすね。台所も「通路」って感じじゃなくてそれなりにスペースあるし」
「いやいや、この物件がよく残ってたなぁ。だいたいこの手のは、年末に来られるお客様で終わってしまうことが多いんですけが、うん、数カ月に一つくらいの掘り出し物ですよ。たいがいのお客さんなら、一目で決めちゃうんじゃないかな」
(ありゃ、これってセールストークなのだろな)と思いつつ、まぁ好印象を持ったので「ここにしちゃいましょうか。」と言う私。
「南向きで昼間、日光入るし、角部屋だし。いいっすよ、ここ」と担当さん。
(角部屋って、たんぼの田の4部屋構成なんだから、全部角部屋やんか)ともう少しでツッコミそうになった。
担当さんは、なにやらデジカメで物件の内装や外観を撮っていた。今後の資料になるのだろう。
帰りの車の中で、担当さんの携帯電話がなる。「はいはい、もしもし」ひとしきり話したのち、電話を保留にして彼が言う。「うちの別の担当が、お客様つれてさっきの所、見に行きたいらしいんですけど。たぶん、行ったら即決まりになると思いますが、どうします?あそこに決めて、押さえちゃいます?」(なんだか、台本があるような展開だな)と思いつつ、そう何日も見て回る気もなかったこともあり、まんまと「決めちゃいますか」と言う私であった。
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当時の本 『サルでもできる料理教室』清水ちなみ and OL委員会 (幻冬舎,
1200円+税) はたして、今後、自炊するのかどうかは謎なのだが、おもしろいので買ってみた。「果して、その程度で料理というのか?」「手を加えてるから料理にちがいあるまい」って感じ。
当時の世 インフルエンザ猛威。
当時の私 引越荷物を運んだら、私のスペアリブが筋肉痛。