[*]I have few money

Date: Mon, 8 May 2000

私に生活者としての意識が欠如していることは、黄金週間の前に、お金を口座から下ろしておかなかったことから明らかである。5月3日の晩飯を食べて、支払いを済ませた私の財布には28円しか残っていなかった。

「おら〜!!自分(関西弁では二人称に使われる場合がある)、それでもATM(Automated-Teller Machine;現金自動預入払出機)か!こら〜!!人がおらん時にこそ働くのが自動機やろが〜!!」

などと機械相手に逆上しても仕方がないし、一応、私もそれなりに歳をとっているので、機械が動くためには人々が働かなければならないことも知っているつもりである。

それにしても気分が既にひもじい。晩飯は終わったが、晩酌用の酒がないのである。私の部屋には冷蔵庫がないし、買い置きしてたら、あったら、ある分だけ飲んでしまうので、毎回、その日の飲み分を買うことにしているのである。

「おら〜!!主人か女将を出せ〜!!俺を誰だと思ってんだ〜!!」
俺は俺だし、ここはお店でなく、自室である。敢えて言うなら、主人は私である。俺に私が呼び出されても仕方がない。

「あと二日どう致しましょうか」
今年の連休はひもじくなるのであろうか。とりあえず、インスタントのラーメンとお茶漬けが一食ずつあった。

あとは、実家から以前送られてきた荷物のなかに、開封してない一口サイズのチョコレートが一袋(300g)とプロポリスロイヤルCという謎の健康食品が60g(1包1gの中にプロポリスエキス末200mgが含まれてるらしい。プロポリスとは蜜蜂が集めた樹脂に蜜蜂自身の分泌物を加えた、なにやら貴重なものらしい。最近、オロナミンCにも加えられた)あるのみである。

あ、あと、保険の外交のおばさんがバレンタインの時にくれたチョコもまだ開けてないぞ。んん、こういう非常時に備えてこそ保険だな。もっとも、私は、私が死んでも私は困らないので、生命保険には入っていない。その辺りは、また別の機会に述べるとする。

とりあえず、エネルギーの消費を抑えることだ。もっともらしく言い訳をして、ぐうたらをきめこむ私。「うう、だれか寝酒を持ってこい!!」と騒ぐわけもなく、騒いでも誰かが持ってきてくれるわけでもなく。落ち着いて寝ることにする。

落ち着くと閃く。「おお、そういえば、だれぞからもらったビール券がどこかにあるはずではないか」だが、ちらかった部屋で発掘作業をする気力もエネルギーもないのでおとなしく眠る(ああ、私はまだアル中ではないな。と思ってみたりする)

最近の私は眠りが浅い。明け方に何度も目が覚める。7時過ぎに目覚めた時に本格的に起きることにしている。下痢も吐き気もない健康な朝だ。(あながち、たまに金欠ってのも捨てたもんじゃないな。)と思う。金欠が慢性になってない傲慢な思想である。

9時過ぎにおもむろに服を着て出掛ける。ズボンがすんなり入る。「おお、金欠ダイエットか」(単に夜食を食ってないから胃袋が空いてるだけである)試しに体重計に乗る。いつもより1kg以上軽い。

そのままお散歩に出掛ける。やはりATMは動いていない。かわしん(川崎信用金庫)のは動いてるようだが、かわしんカードしか受け入れてくれない。私のメインバンクはいかんせん第一勧銀である。

散歩しながら、おなかが減って、なんとなくクラクラするけど、倒れるほどでもない。いい感じでクラクラである。(お酒に手をだすより、コストを抑えてクラクラできるなら、いいかもしれんな。ふふふ。)とちょっと思う。

クラクラしながら路上観察に出掛ける、つい、コンビニで買い物しようとしたり、自動販売機で飲み物を買おうとして、金がないのを思い出す。(ああ、普段、俺ってけっこう濃い食生活してるのね。そら、春の健康診断で糖が出るわ)

結局、4日の晩は、近所に住んでるYさんちに、むうさんを連れていき、芸を見せて晩飯にあずかろうという計画となった。海老一染之介・染太郎師匠ではないが、肉体労働はむうさん。頭脳労働はむっちさんである。ギャラは晩飯。むうさんも充電池満タン。ごちそうさまでした。

そして5日は子供の日。私には子供はいない(私がお子様だという疑いはあるが)。少し部屋の整理をすることにした。発掘作業をしていると、そこにキラリと100円玉。私は発掘作業もそこそこに、100円と少しをにぎりしめ、近所のコンビニに行って、牛乳を買った。体に沁み入るうまさだ。

ご満悦で発掘を続けると、図書券が出て来た。おお、これで本が買えるではないか。ハラヘリニコフで食べ物屋の前を通ってはグー、本屋の前を通ってはクーな私だったのだ。

子供の日をプロボリスとチョコで乗り切った私は、6日、朝一番で金を下ろしに行き、朝飯を買った。その日、三食しっかり食べた私の体重はしっかり元通り、リバウンドしていた。

---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS-----------------------------------
当時の本 リバウンドした私の頭が買い求めた本。総重量3.8kg。脳が肥大。
『談志百選』立川談志、山藤章二画(講談社, 2500円(税別))
『「こころの時代」解体新書』香山リカ(創出版, 1500円+税)
『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』遙洋子(筑摩書房, 1400円+税) リンク先はhayaさんのファンページです。
『のうみそGOODハッピー 2』chara,構成/四方淳子(ソニー・マガジンズ, 本体1200円+税)
『文藝bungei 夏』(河出書房新社, 1000円(本体952円))特集 ねこぢる
『荷風語録』川本三郎編(岩波現代文庫, 本体1000円+税)
以下はマンガ
『とうとうロボが来た!!』QBB(青林堂, 1100円+税)
『できるかなリターンズ西原理恵子(扶桑社, 定価1000円(本体952円)
『弥次喜多 in DEEP 4』しりあがり寿(アスペクト, 本体1000円+税)
『東京大学物語 30 純愛』江川達也(小学館, 本体505円+税)
『エイリアン永理』吾妻ひでお(ぶんか社, 定価780円(本体743円))
いつ読み終えるやら。(ってマンガはおおよそ読み終わったが)
当時の世 17歳少年によるバスジャック事件。
当時の私 NHKのニュースの副音声で、ハイジャックと言われてるのを聞き流しながら、ああ、バスジャックって和製英語なんだ。と思う。

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私が飢えをしのいだチョコは「生活良好ひとくちチョコレート」という品名で、日本スーパーマーケット協会グループの共同開発商品で、コプロ株式会社の製品らしい。チョコに入ってるのは、カカオで、おにぎりに入ってるのは、おかかである。
プロポリスロイヤルCの製造元は株式会社秋田屋本店らしいのだが、秋田屋本店の所在地は岐阜県であるらしい。
オロナミンCは大塚製薬の製品で、プロポリスの入ってる製品は金色のラベルをしている。