[*]Ambivalent spring

Date: Mon, 9 Mar 1998

空気や日差しがやわらかい。こないだは少し雪が降ったけど、もう春だ。春の陽気に誘われて散歩にでかける。鳥のさえずりや、花のようすや匂いがますますもって春だ。陽気に誘われてでかけたのはいいけれど、そのあと、なんだか目がかゆくなって鼻がムズムズして、クシャミの連発になって陰気になる。

去年の今頃にも書いた気がするが、わたしはいわゆるアレルギー体質らしく、世に言う花粉症の症状がこの季節になると出るのだ。春はウキウキと陽気になると同時に、グシュグシュと陰気になる、アンビバレントな私である。

鼻はどうやら父から遺伝したらしい。父は牛乳屋をやっているのだが、朝の配達の準備のために業務用の大きな冷蔵庫に入ったあと、冷気に当てられたのか、もう鼻がもげて飛んでいってしまうのではないかというほどクシャミを連発する。実際に鼻が飛んでいったことはないが、クシャミのしすぎで鼻血を出したことはある。

さらに、そのあと、トイレに行って内臓も出てしまうのではないかという激しい下痢をするのが、毎朝の恒例行事になっている。しかし、これは冷えによるものというより、アルコール性の下痢なのではないかと思われる。息子である私もしばしばこれを患う。下痢が遺伝したのか、アルコール好きが遺伝したのか、いまいち切りわけができない。でもどうやら消化器系は父親由来の遺伝子でできてるらしい。

思うに、下痢は男に多く、便秘は女に多い。男は出す性、女は抱える性、という安易なアナロジーに陥るのもなんだが、この便通についてはXY染色体にのった伴性遺伝なのではないかと疑いたくなる。母は私というウンコを10箇月も抱えてるのに耐えられず、9箇月でひり出したそうだ。

さて、アレルギー性結膜炎の私は、仕事でCADに向かっていて、目を開けてるのが辛い状況に陥ることがしばしばある。他の人に比べると仕事量が少ないので、仕事疲れではないと思うが、はたして、花粉由来のアレルギーなのか、仕事由来のアレルギーなのか、ここでも切りわけは難しい。

目がコロコロして異物感がある。普通の時も、視野のなかに糸クズのようなものがサーッと流れる飛蚊症類似の症状があるの私だが、この季節はさらに物理的な異物感があるような気がする。目玉をギュッと握られた感じ。眼圧が上がってるのだろうか。アルコール摂取と、眼圧は相関があるらしく、将来の緑内障の危険を感じさせる。病的な飛蚊症の場合は眼底出血や硝子体の混濁による場合もあるらしい。眼底出血はないけど、眼の表面ならおなじみ結膜炎で充血している。

心配になって、父に意見を求めると、「ワシもそうやから、大丈夫や」と意味のよくわからん返答をする。これだから、この人に真面目な相談をする気にはならない。だが、どうやら目玉も父親由来の遺伝子で作られたらしいと分かる。

アレルギー性鼻炎の症状が出ているときは、水分の摂取を控えた方がいい。といっても、これは私の経験則なので、他の人にも当てはまるか保証はない。アルコール摂取も控えた方がいい。シャックリのかわりにクシャミの連発になる。

3月なのに赤鼻のトナカイになってしまいそうなくらい、鼻をかむ。ティシュをどんどん消費する。こんなに鼻水出してたら干からびちゃうよ。と思っても、人体の6、7割は水だから、鼻水で出る量など知れたものだ。今、取り出したティシュに「もう残り少ないです」マークの色付きの線が入っている。やばいなぁ。と思いつつ、もう1枚取り出す。取り出し時の抵抗が違う。スカッ。どうやら弾切れのようだ。「もう残り少ないです」マ−ク付きはブービー賞だったらしい。

まずい。このままでは今夜を越せない。明日の朝、冷たくなった私を見て、監察医に「死因:鼻水による溺死」と書かれたりするのはたまったもんじゃない。夜中のコンビニにスクランブルをかけて、ティシュを買いにいく私。

ティシュの箱だけ持ってレジに行くのは、なんだか恥ずかしくて、余計なものを買う。また、無駄遣いをしてしまった。

---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------
当時の本 『平成トム・ソーヤ』原田宗典(集英社文庫, 680円)ワクワクして読んだ。ハイティーンの疾走感というかなんというか。男の子って感じ。でも「平成」というタイトル、単行本刊行時の「平成」と、文庫化された今の「平成」では、社会がすこし違ってる。
当時の世 温暖化問題の旬は終わったらしく、今は環境ホルモンがはやりらしい。
当時の私 目がおにぎり。(意味不明)


調子が悪いと感じるのは、普段、健康に生きているせいである。かといって、花粉症を苦に自殺というんじゃさまにならない。生命活動を抑える、つまり、眠ったり安静にしたりすると、症状は出にくい。「私は花粉症だからしょうがないのよ〜」とばかりに周囲を憚らずクシャミをする人は、クシャミによって活動を活発化させる悪循環に陥る恐れがある。が、私にとっては所詮、他人事である。

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