Date: Mon, 6 Dec 1999
世界中でどこかで紛争が起きてるのは事実だし、2000年になれば世界大戦がないと言い切れるものではないけれど、平和でないと、ぼくのように、どうでもいいことを考えるのが好きな人間は生きていく場所を失ってしまう。
ボニー&クライドには明日がなかったのかもしれないが、ボンクラなぼくは明日があることを望む。
さて、最近、気になっている「あさっての翌日、翌々日」問題である。英語なんかは「あさって」がもうThe day after tomorrowである。他の国でも、「あさって」は「明日の次」みたいな単語だし、その翌日という単語はなさそうだ。いや、単に私が知らないだけかもしれないし、日本語の「しあさって」だって「次あさって」みたいなもんだ。なお、下の表は特殊な文字のところは、近い文字に置き換えてます要注意。
日本語 | きょう | あした | あさって | しあさって |
英吉利語 | today | tomorrow | the day after tomorrow | two days after tomorrow |
独逸語 | heute | morgen | uebermorgen | ueberuebermorgen |
仏蘭西語 | aujourdhui | demain | apres-demain | apres apres-demain |
伊太利語 | oggi | domani | dopo domani | ? |
露西亜語 | сегодня | завтра | послезавтра | ? |
西班牙語 | hoy | manana | pasado manana | dia depues pasado manana |
葡萄牙語 | hoje | amanha | depois amanha | ? |
支那語 | 本天 | 明天 | 后天 | 大后天 |
ウェブで検索すると、けっこう先達の方々や、言語学者さんとかがちゃんと調査研究しているらしいので、まとまったデータがすでに存在しているようだ。ついでであるが、「昨日の前日」を「おとつい」というのは西日本、「おととい」というのは東日本だと、ざっくりと捉えてよいようだ。
この「ざっくり」という言い方も、「まったり」と同じく仕事しはじめて初めて覚えた言葉だ。「ざっくり」は「ザクッと真っ二つに思い切って切る」のかなぁ、と思ったら、概要を説明しているようだった。「まったりは」まろやかでコクがあるのでも、むねやけがするのでもなく、場がなにやら間延びした感じに和む状態のことのようだ。
閑話休題(再三にわたって言っているが、私の話は概ね無駄話だから、あえて「閑話休題」などと言って本筋に戻そうとするのはおかしい)
私の手抜きのフィールドワークによると、
・栃木のTAさんは「しあさって>やのあさって」
これは、『日本の方言地図』徳川宗賢編で言うところの、「東京」タイプである。ただし、掲記の本の調査は1903年以前生まれの男性がインタビュイーだったようなので、現代では、もう、関東一円は「東京」タイプになっているとも考えられる。なお、その本で「東京以外の関東」は「やのあさって>しあさって」の順である。
・千葉のMMさんは「しあさって>さきあさって」
「さきあさって」を「あさっての翌日」で使う人も私の知ってる中にいる。くだんの本に出てくる地図では、千葉県全域が「やのあさって>しあさって」とある。ちなみに、「さきあさって」という用法は本に出てこないから、比較的新しい用法と思われる。
・埼玉なSMさんは「しあさって>(なし)」
文献では埼玉の西の方は「しあさって>(なし)」とある。
実は、4日後を表す単語は「ない」と答える方も全国にけっこういる。
・東京なMAさんは「しあさって>やのあさって」
でも、あまり「やのあさって」は使わないと聞く。
・IEさんも「しあさって>やのあさって」でも「やのあさっては、あまり使わない。」
・IMさんは「しあさって>(なし)」
うん、やはり使われない言葉は無くなっていく、もしくは元々ないのだろうか。
・岩手なSMさんは「しあさって>(なし)」
・山口なIYさんは「しあさって>(なし)」
・長崎なHTさんも「しあさって>(なし)」
くだんの本によると、この単語に関しては新潟富山間−長野東西間−山梨静岡間−静岡東西間に一本境界がある。それより東は「やのあさって>しあさって」東京都だけ例外で逆転。その西に長野西部+静岡西部「しがさって>ごがさって」と、岐阜+三重のグループ「さあさって>しあささって、さきささって」があり、そこから西は概ね、いわゆる関西圏である。但し、高知、鳥取、島根東部、広島、佐賀、は4日後の表現がすこし違うらしい。
・富山なHTさんに聞くと、「しあさって>しのあさって?」と言う。
4日後については記憶があいまいだそうだ。ちなみに文献には「しのあさって」は長野中部で「あさっての翌日」を表す言葉として出てくる。
さて、京都なIKさんは「しあさって>ごあさって、ななくらいまで言ってたかな」
関西人の王道なご回答である。
ところが、WMさんは「しあさって>やのあさって」と、すっかり東京風。「大阪>和歌山>岩手>大阪>神奈川と渡り歩いてるからね」と言われる。
さすがの私も、「おでん」のことを「関東煮(かんとだき)」とは言わない。
大阪なTAさんに聞くと「しあさって>(なし)」イカ焼きの時は味方だったが、今回は同胞ではないようだ。
KMさん東京の生まれ育ちらしいが、「ししあさって」を使うという。親御さんが山口だから西日本語圏だという説もある。
他に大阪の知り合いに聞くと「しあさって>ししあさって」というパターンはたしかにある。「ししあさって」は文献には出てこないから明治よりこちらの言葉であろう。
そいつに言わせれば、その次は「しししあさって」になる。PUFFYやDA
PUMPじゃないんだから、まったく。
#関西人で私と歳が近い人なら、圭修じゃないんだから。でもよいかもしれない。(なにがよいのだか)
東京は江戸の初めには中部地方の人が、明治の初めには西日本の人々が入っていって作った街だから特殊なのだろう。そういう意味だと、北海道だって、あとづけな街であることも考えられる。(北海道は東日本型と西日本型が混在していると聞く)
そんな話しないでも、何月何日とか、こんどの何曜日と言えば済むのであるが、私は今だに、「つぎの電車」が「こんどの電車」のあとであることに違和感をおぼえるのである。
---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------
当時の本 『日本の方言地図』徳川宗賢編(中公新書,
720円+税)「捨てる」と「ほる」。「ものもらい」と「めばちこ」。私は書類を変更しなくても、書類をなおす(「しまう」の意味)。
当時の世 町内会の方が落ち葉焚きをしていた、煙の匂いがなんかなつかしかった。
当時の私 へんな咳をしている。