(む}Unable to control

Date: Mon, 12 Jun 2000

さて、と出掛けかけて、玄関口で、ふと、思う。
ゾワゾワする気持ちは、よくスポーツとか、芸術で昇華するのがよいというではないか。確か古井戸とかいう先生が、リビドーだかなんだかいう単語で紹介していた衝動エネルギーに違いない。

衝動エネルギーは我慢すると強くなったり、でも、まったりと引き延ばすと、昇華ではなく霧散してしまうことがある。私の場合はネタで昇華してるとも言えるが、これは独り言であるからかなり独り善がりである。ただ、少なくとも、私の場合、周りに聴衆がいない本当に一人の時は、独り言は言わない。

と、ゴニョゴニョ言っても仕方がなく、要は自分に言い訳をしているのである。

脈拍、運動と言えば、「踏み台昇降」であろう。しかし、私の部屋はアパートの2階であるからして、およそ80kgの体で踏み台昇降をしては下の階の方にご迷惑になるし、一応、部屋の契約上、中での運動は禁止事項になっている。

となると、アイソメトリックというか、静的な運動?をすることになる。

そうだ、息を止めるとか、激しく呼吸して過換気症の発作を起こしてみるというのはどうだろう。ただ、過換気によるトリップには、介助人が必要だというようなことを、どこぞで読んだような気がするので危ないので控えることにした。

息を止める方は、なかなか本人が窒息するまで息を止めるのは難しかろうということでやってみることにした。息をちょっと頑張って止めると、体の方が、頭より生きる意志を持っているので、その応答が逆に頭の方にフィードバックされて、「私の体は生きている」ってのを意識できるのかもしれない。

よく、ダイエットとかして体のサイズを制御しようとしている人は、「自分の体を思い通りの体型にしたい」という支配欲のようなものからくるサディスティックなところと、「自分の体がしぼられて行っている」というマゾヒスティックな感覚でもって続けてる独り善がりな行為なのではないかと思われる。ああ、見せる相手がいるならそうでもないか。
#ん?自分もダイエット中なのではなかったか?

自分の体は、あらためて考えると、かなり自分の言うことを聞かない。いや、聞いてくれる範囲の方が、ひょっとすると、小さいかもしれない。
筋肉さん達は「かったりぃ」と言って動いてくれないし。心臓さんは「止まると死ぬんじゃ」と鮫だかマグロだか寛平ちゃんだか分からんこと言いながらバクバク言ってるし。胃君は強酸で自らを傷つける危険を冒しながら食べ物を消化してくれてるし。肝臓さんは無言で酒飲みの私のために働いてるし、「私」の本体であるはずの脳味噌さんの中の「む」意識さんは「眠いしだるいし、会社行くのやだ」と出社拒否を表明される。私はそれをなだめながら出勤する。私の本体はどこだ。

それにしても、不肖、不随意海綿体さんが朝方、充血して硬度を増しているのは何故だろう。彼が落ちつくまで、こちらも落ちついて用を足せない。生物学的に、あるいは心理学的になんらかの目的があるのだろうか。謎だ。
#運動してないとなまるのから、いつも勝手に練習してるのかもしれんね。

以前にも書いた気がするが、私は小学生の低学年の頃、「8時だよ全員集合」の中のコント(内容は忘れた)を見ていて、腹を抱えて笑い過ぎて、横隔膜が痙攣して、呼吸困難になったことがある。その時、私は「死ぬほどおかしい」という語彙を体得したと言えよう。しかし、「腹の底から笑う」と言うには、実は横隔膜は、どちらかいうと、解剖学的な位置関係からすると、腹の天井である。

さて、水中クンバカを敢行するにも、私の部屋の風呂は浅すぎるし、この頃、シャワーで済ませて湯船にお湯を張ることが少ない。しかたないので、「よし、1分間息を止めるぞ。」と決意して、私がいかに体の事情を聞かずに独り善がりな判断をしているかが露呈したのは45秒後であった。

息が続かないのである。もしも、今、地球の大気が失われたら、私は、1分も経たぬうちに、花畑か、河の向こうか、どこか遠くへ行ってしまう計算になる。ま、隣に居るのがジャック・マイヨールだとか、ヨガの達人だとかだとしても、5分と持たないであろうけれども。
#いや、大気圧が失われると、身体の内圧の問題とか、体液の沸点とかの問題も起きるだろうから、1分も持たないとも思われる。

と、いろいろゴニョゴニョ言っているが、45秒の息止めの結果。私の脈は、最高130mmHg、最低79mmHg、脈拍74回/分であった。ん、あんまし面白くないな。

こうなったら、やはり、あの手の本を鑑賞してゾワゾワするしか手はないではないか、私は、再び、出掛ける用意をするのであった。
#この時点で,多少ドキドキしていたのだが、データを取り損ねたのは言うまでもない。

つづく

---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------
当時の本 『90くん』大槻ケンヂ(角川書店, 1100円+税)99年で世界は終わらなかった。オーケン流、90年代総括。
当時の世 梅雨入りしたらしい。
当時の私 ここ3週間、土日も仕事してます。いかんねぇ。余裕がないと。って、まだネタ書いてるやん。ちょっとキレがね。
朝方、起き抜けに測定した結果は、血圧が上123/下101。脈が46回/分。わずか22mmHgの圧力で、一秒に一回も動かないのか、マイ・ハート。

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