(む}Virtual surround

Date: Mon, 03 Sep 2001

みなさん(特に男の子)、自分用のAVルームを持ちたいという欲求にかられたことはないだろうか。もっとも、専用ルームを持つ夢は1Kに住んでるようじゃ、ダメダメなんだけど。親父の書斎っていうか、男の子の秘密基地っていうか。そんなの。

AVルームというのは、別に、個室にテレビとティッシュが設置されてて、エッチなビデオ見まくりなお店のことではない。いや、私自身が、そういうお店に行ってみたことがあるわけではない。けど、そういう商売もあるのだ。

Adult Videoでもないし、Animation Videoでもないし、Audio Visualである。もっともソフトの選択によっては前の二つが適用されるケースもありうると思われる。しかし、オーディオビジュアルとか、マルチメディアって、これからなのに、なんか単語が廃れた気がするね。単語が廃れたってことは普及期を迎えたってことかもしれないけれど。

近頃、DVD(Digital Versatile Disc) Videoの普及で、高音質・高画質が、容易に手に入るようになっている。さらに、5.1chのDOLBY DIGITALだとかdtsだとかいう音場再生技術を使ったソフトも提供されてたりして、それを再生する環境がないのは、なんだかBSアンテナはアパートに共同で付いてるけど、チューナーのない私の部屋って感じなのである。

5.1chってなんだ?という向きの方もいるかもしれない。職場の飲み会なんかで、幹事担当に、「とりあえず、ビール、5、6本」っていって、5.1本分なんちて、5本とグラス1個なんてことはないわけで。前方で左中右、後方に左右にスピーカー。そして、前方に低音再生用にサブウーファーが配置されてるようなシステムが5.1chなのだ。

しかし、部屋の防音が特にしっかりしてるわけでもなく(低音はよく漏れます)、スピーカー6本と、アンプやデコーダーまで買う用意もない。しかし、この頃、5.1ch対応なDVDも良く見かける(ひょっとして、需要と供給の比率があってないのか?ま、製造費に大差ないなら、是非、オーバースペックでも商品化しておいて欲しいものだ。でもdts版って別定価になってるケースが多い気がする。)んん、どうしたものか。というわけで、今回、購入したのが、またしてもSONY製品ですが、Digital Surround Headphone System MDR-DS5100なわけであります。購入価格は31,800円であります。

通常、ヘッドフォンで音を再生すると、音場の中心は頭の真ん中になるわけです。CDを見せると「なんかキラキラしてキレイやなぁ」という、我がローテク両親にウォークマンのヘッドフォンをさせると、「うわぁ、頭の中で音がする」と驚きます。なんて親を馬鹿にしてますが、私も、初めてヘッドフォンを体験した時は、「え、頭の中で音がしてるぞ。変なの。」と思ったものです。果して音場の中心の頭の中で脳細胞が破壊されるのと、携帯電話の電磁波で脳腫瘍が起きるかもという確率とどっちが高いかと聞かれると謎です。 私の肥えてない耳では、インナーヘッドフォンの音場と比べると、ずいぶんとなにか、こう、空間感のある聞こえ方がします。もっとも、これはヴァーチャル。つまり、ほんものっぽいってわけで、実は両耳のそばで音が鳴っているのである。

頭の中で音がするというのは、音場の再生としては不適切なはずで、本来は、自分より前にスピーカーがあるのだから音の中心は、自分より前方にあるはずです。なんちて、ヘッドフォンなんだから両耳のそばから音がしてるのは事実なわけで、商品を買った時の添付資料にも、なんだか8ヵ国語で、ヴァーチャルドルビーの解説書がついてました。なにやら、密閉型でなくて、オープンエアなタイプのヘッドフォンだから、ヴァーチャルな音場が再生できるらしいです。でも、オープンエアだと、低音部が漏れて抜けがちな気がします。残り7カ国語のことは知りませんが、概ね日本語が分かる私は、分かった気でいます。

制御部からヘッドフォンまでの接続は、赤外線のワイヤレスです。テレビや雑誌に出てくる、よその人の部屋を見て思うのですが、みんなうまく隠してるのか、それともないのか、ケーブルが見えないですね。ケーブルむき出しな私の部屋は、サイバーというより殺風景というか、野暮な感じがします。っていうか、ワイヤレスになるために、一所懸命(って言いつつ、命は懸けませんが)ワイヤを張ってる私が健気です。

「サラウンド」って単語、聞いただけで、なんかこう、「音場」っていうか音に囲まれてるって感じがします。一字間違えば、「皿うどん」になる危機をはらんでいますが、機器のケーブルの、からみ具合は、どちらかいうと、スパゲティです。

接続を続けながら、「よし、これで、ついにDVDプレイヤーの光デジタルのオーディオ端子が活躍する時が来たぞ」と独りごちながら、はたと止まる。あ、端子の口が違う。どうやら、光デジタルケーブルには角型プラグと丸型ミニプラグと種類違いがあるのだ。なんてこったい。おあずけをくらった状態の私は、はぁはぁ舌を出した犬状態で、近所の電器屋まで駆けて行った。まんまと角型−丸形変換ケーブル2m(SONY製)、2,600円也をご購入である。

やっとこケーブルを買ってきた私は、ビデオの音声出力を、制御部のアナログインに、DVDの音声出力を、デジタルインに接続しました。これで、ビデオとDVDを切り換え可能になりました。ちなみに、映像の方は、ビデオのアンテナ出力を先に買ったUSB接続のチューナー経由でパソコンへ、ビデオのビデオアウトと、DVDのビデオアウトを差し替えで、アイトレックへ繋ぐことになってます。これで、自閉的ホームシアターの完成であります。

サイバー(瀕死語)な私。

せっかくなので、部屋の照明を落として、おもむろに機器をセットし、CINEMAモードにして(もうひとつはMUSICモードがある)DVDを再生する。映画を見つつ、ビールを飲む。うむ、殿ご満悦であります。

殿、ヘッドフォンをしたまま、席を立って、はばかりに向かう。しかし、個室に入った瞬間、赤外線接続は切れてしまう。シャーーーというノイズがヘッドフォンから聞こえる。音のしないヘッドフォン。ああ、ここは個室だがAVルームではないのだ。とほほ。んん、カチューシャ。なんてひとりぼけしつつヘッドフォンしたままシャーーーと用を済ます私。

ことを済ましてトイレを出ると、接続を回復したヘッドフォンから、再び、音の洪水が溢れるのである。「んん、なんだか映画館にいる感じだ。だって、映画館だって、トイレに立てば、見れないし、聞こえないものな。」「そういや、小学生の時に、一つ隣の駅の町の映画館に見に行って、のぼせて通路でゲロ吐いて、迷惑かけたなぁ。」と、ろくに普段、映画を見に行きもしないのに思うのであった。

---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------
当時の本 『知的経験のすすめ 何んでも逆説にして考えよ』開高健(青春文庫,467円+税)眼華がチカチカと光る。
当時の世 新宿歌舞伎町雑居ビル火災。死者44人。
当時の私 昼間にホタル。目の前を光の点がクルクル回る。

dts対応のソフトを再生しようとしたら、dtsランプが点かない!どころか、音も聞こえない。と思ったら、どうやら、DVDプレイヤーの方の初期設定が、dtsオフになってるようだった。