(む}A snail walk on a rainy day

Date: Sun, 10 Jun 2001

何度も夢の中で目が覚める。夢の中なので、実は目は覚めてない。夢の中で目覚めて、布団の上でゴソゴソしている。夢の中でも寝覚めが悪い。そのうち夢の中であることに気付く。やっと目が開いたと思ったら、開いていない。いつのまにかまた、目を閉じていて夢の中である。とうとう目が覚めたと思ったが、夢の中と同じ布団の上である。

寝ても覚めても布団の上とは、ずいぶんと布団の上が好きらしい。だからと言って、寝たきり希望なわけではない。夢の中のぼくは、通勤途中の駅のホームで、my 布団を敷いて寝ていた。私は、ヤドカリかカタツムリか。ナメクジはヤドカリの真似をして転居途中のカタツムリかと、昔、思っていた。「かたつむり」は「蝸牛」と書くそうだが、「蝸」の字がもうカタツムリの絵みたいである。なお、ナメクジは「蛞蝓」。なんかややこしい。

虫偏ということは、人は、カタツムリやナメクジを「虫」と思っていたのだろうか。だとすると、虹も虫なのだろうか。などと考えていたら、また眠りに落ちている。

枕元に目覚まし時計があるが、役に立たない。鳴る前に起きて、ご丁寧にスイッチを押してオフにして、再び眠りに落ちるからである。

こないだ買った低反発ウレタンフォーム枕が良い。ズブズブと沈む。ズブズブ沈んでペチャンコになる。じゃぁ枕なくてもいいのじゃないの?枕カバー替わりにかけたタオルが、デレデレになっている。自分のにおいに混じって、ウレタンフォームの樹脂のにおいがする。この混じったにおいが化学反応してクロロフォルムみたいな催眠ガスを発生しているのかもしれない(な、わけはない)。

天井を見上げると、蛍光灯からスイッチのヒモがブラブラしている。寝てしまうと、ヒモに手が届かない。ヒモを延長して床の近くまで持って来るにしても、私は今は部屋の中央でなくて、端の方に寝ているので、伸ばしてもヒモは届かない。蛍光灯のリモコンってないのか?と思う。

時計の秒針が時を刻んでいる。チクタクだかカチコチだか、チッチッだかカッカッだか。
胸の心臓が命を刻んでいる。ドクドクだかドキドキだか、バクバクだかドッドッだか。

蛍光灯から低周波がジィーーーーーーとでている気がする。スイッチを切り忘れたパソコンのハードディスクから、時折、カリ、コリと音がする。風呂場の換気扇がブーンと唸っている。外の道をトラックがゴーっと走り抜ける。ザーッと、突然雨が降り始めた音がする。

「雨が降りだしちゃ仕方がないなぁ」

と、ひとりごちながら、雨が降る前からゴロゴロしていたくせに、雨のせいにして、ゴロゴロを継続する。
外ではゴロゴロと雷が鳴っている。

---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------
当時の本 『「わからない」という方法』橋本治(集英社新書,700円+税)「わからないけどやる」のでなくて、「わからないからやる」のである。「わからない」のは当たり前である。「わかる」ことは「わかって当たり前」なのと同じくらい。
当時の世 梅雨入りしたようだ。
当時の私 時折、意識レベルが落ちている。

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「蝸」は象形文字ではないく、形声文字なんだそうだ。
梅雨時以外のかたつむりは、夏以外のTUBEより活動が少ないのではないか。