A few of...

「ちょっと」は「少し」なので、少しだけ過ぎたくらいで、破綻するようなシステムは、ちょっと、ひ弱に過ぎる。

電話が、かかって来た。
「ちょっと、お待ちください・・・申し訳ありません。〇〇はちょっと席をはずしております。」
ちょっと経った後に再び電話が鳴る。
「はい、〇〇ですね。ちょっとお待ちください。・・・すいません。〇〇はちょっと打合せに入ってまして、ちょっとまだ戻ってないようですが．．．」
ちょっと経っても戻らないのなら、ちっともちょっとではない。こんな状況はちょっといただけない。

「もしもし、あの、その件に関しましては、ちょっと問題がありまして、ちょっとこちらでも調査しまして、ちょっと上司と相談させていただいて、またちょっと、後で、連絡差し上げるように致します。ちょっとすみませんけれども、その辺り、ちょっとよろしくお願いします。」

ちょっとの調査で結果がでるような、ちょっとした問題ならば、もうちょっと早く回答を出していただきたいものである。

「あ、ゴメン。ちょっと忘れ物したみたい。取りにいってくるから、ちょっと待っててもらえる？」
概してなかなかやって来ない。
しかたがないので、「ち〜よ〜つ〜と〜」と、ちょっと牛歩戦術に出てみる。

「ジャンケンポン。チ〜ヨ〜コ〜レ〜イ〜ト」に、ちょっと似ている。私の故郷の関西方面ではジャンケンでなく、インジャンと言うこともあるというのは、ちょっとした豆知識である。ちょっとした豆知識は、概して豆ほどにも役にたたない。

「グーで勝っても、3歩しか進めないのは不公平だ」などと生意気にぬかすジャリが、「グ〜リ〜コ〜ノ〜オ〜マ〜ケ」などと、のたまって、７歩進もうとしたものだが、これは悪しき平等主義の教育のたまものであろう。グーは三歩しか進めないからこそのタクティクスがあるはずだ。

閑話休題
といっても、まだ本題に戻るわけではない。

「ちょっと」がどれくらいの量なのか、サジ加減がむずかしい。だいたい、近頃はサジなんか使わない。別に「和食ならスプーンとは言わない」とこだわるつもりはないけれど。あわててつかむと先割れスプーンだったりする。学校給食なんかで先割れスプーンを使うと、ちょっとすくいにくいので、つい、口を器の方に近づけるようになって、いわゆる「犬食い」になり姿勢が悪くなると言われたのはちょっと、いや、ずいぶんと前の話である。

先割れスプーンと言えば、私はグレープフルーツを思い出す。私の実家ではグレープフルーツを食べる時にのみ、うやうやしく登場する道具であったからである。ちょっとノスタルジーである。しかし、ちょっと変ちくりんな思い出し方だ。

たぶん、メロンを食うときも使っていたような気もするが、私はメロンを食べると口の中がちょっとかゆくなるので、ちょっと得意ではない。私が入院しても、お見舞いにメロンを持って来ていただくのは、ちょっとご遠慮いただきたい。

相手の人が「ちょっとなぁ〜」と難色を示す場合、大概、ご不満の点はちょっとどころではないことが多い。関西人が「ちょっと考えさせてもらいます」と言う場合は、大概、ちょっとも考えない。実は「もう要りません」という意味であることが多い。

かように、「ちょっと」の氾濫はちょっとどころではない。ちょっと、ちょっとが使われすぎなのではないかなぁ。と、ちょっと思う。またしても「ちょっと〜すぎている」

今回の文を書いていて、ちょっとの容量は可変であり、必ずしも、a few ofとか、a little of とは限らず、また、Excuse me的にも使われることが分かった。ちょっと勉強になった。

「ちょっと」は、つまり、
「所により一時雨。局地的豪雨である可能性もあります。ご注意下さい。」

---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------
当時の本　『今日の芸術　時代を創造するものは誰か』岡本太郎（光文社文庫, 495円＋税）なんだかわからなくても、それも「なんだこれは」という感動なんだ。
当時の世　近所に太郎さんの美術館がオープンするので、商店街はちょっとした太郎ブームのようだ。
当時の私　ちょっとね。

このネタの原案を見せた方々に、「グレープフルーツを食べる時のは、先がギザギザになったやつでしょう。」というツッコミを頂戴した。そういや、うちにも有った気がする。でも先割れスプーンで種をほじくったような記憶もある。「ところで、あのイチゴつぶす、ちょっと平らになってるスプーンって、平らなところにブツブツがあるじゃないですか。あれって、やっぱりイチゴの種にフィットするんですかね？」私はイチゴをつぶさない派であったのでその辺りはよくわからない。