(む}At Yoshinoya 2004

Date: Thu, 12 Feb 2004

2月11日というと、一般に建国記念日である。私は日本がどう建国したのか知らない。いつから日本は日本なのか。たぶん、いつのまにか日本だったのだと思う。

あの発明家のエジソンの誕生日でもあるらしいのだけれど、失敗は成功の母と言ったのだか、成功するまで失敗したというか。しつこかったのかもしれない。私の家族のものならば、うちの弟の誕生日と答えるに違いない。子供のころは、弟は誕生日が必ず休みでいいなぁ。なんて思ってたこともある。

そして、

米国で、いわゆる狂牛病(Mad cow desease, BSE: Bovine Spongiform Encephalophathy, 牛海綿状脳症)の牛が発見されて、米国産牛肉の輸入が止まり、それを主原料とする牛丼チェーンが牛丼メニューの休止に追い込まれ、ついに吉野家のメニューからも消える日が来たのである。年始から特盛の販売を止めるなどしていたが、ついに在庫が切れるらしい。

というわけで、この頃、休みの日の朝は、マクドナルドで、ソーセージエッグマフィンのセット(ドリンクはミルクで)だった私も、のこのこと牛丼を喰いにでかけたのであった。午前7時であった。

最寄りと言えば、たしかに、宿河原店であるが、車で行くような立地条件なので、次点の向ケ丘遊園店を目指して、てくてくと15分ほど歩いた。そういえば、向ケ丘遊園が閉園してもうすぐ一年になる。小田急線の駅名はずっと向ケ丘遊園駅なのだろうか。ま、みんな「ゆうえん」と呼んでいるしなぁ。

さて、駅前に着いて半地下なお店に向かう階段を降りようとすると、入口に白い貼り紙「当店は牛丼・牛皿の販売を休止させて頂きました」なに!もう弾切れか。前日10日に駆け込み需要があったとは噂に聞いていたが、朝食からもうないのか。のちに知った情報によると、2/11午前6時の時点で関東圏の8割の店舗で既に売り切れだったという。

牛丼を食べたいだけなら、10歩くらい歩いた隣に、2/15までは在庫があるという松屋があるが、そういう問題ではない。(では、どういう問題なのだ。)私は向ケ丘遊園から小田急線に乗り、登戸でJR南武線に乗り換え、武蔵溝ノ口に向かった。この頃は御無沙汰しているが、食事時には代替メニューや駆け込み需要で、結構繁盛してるのを見た記憶がある。

そして、店の前に行くと、入口には白い貼り紙と、店頭にはカレー丼を前面に押し出すのぼり。牛丼を食べたいだけならあと数十メートル歩いて松屋で牛めしを頼めばいいのだけれど、私は踵を返して、再び南武線に乗り込んだ。

確か、武蔵新庄や武蔵中原にも吉野家はあったはずだが、スキップして武蔵小杉まで出掛けた。前に降りた時の記憶を頼りに吉野家を目指す。しかし、入口には白い貼り紙がされていた。時間は午前8時前。まだ、朝マックは始まっていなかった。

首都に侵攻するしかないか。私は東急東横線に乗り込んだ。所要時間表を見ながら、今来た各駅停車をやり過ごすと、4分後に特急が来るが、特急は各停より5分速いだけだから都合1分しか得しないのだなぁ。などと考えているうちに各駅停車は発車してしまった。

そして、渋谷に着いた。たしか渋谷には何軒か吉野家の店があるはずだが、歩き回って探すのもなんなので、私にはめずらしく即断してJR山手線に乗り換えた。目指したのは新宿である。さすがに新宿なら駆け込み需要も見込んだ在庫くらい持ってるだろう。

休日の朝の新宿に来るのは初めてだった。さすがに人通りは少なめだった。ぼくはやや早足で、前に行ったことがある店を目指した。オレンジ色のお馴染みの看板に「牛丼 吉野家」と黒字で書かれているが、まだ油断ならない。どうやら入口には白い貼り紙はない。

店に入る。牛丼の匂いはする。残り香だろうか。メニューを横目で見る。消えてはいない。店員さんが近づいてくる。いつもなら「並」としか言わないのに、「牛丼の並ください。」と言う。

少しして来たのは牛丼の並盛、心なしか牛肉が少なくなってないか?という気がしないでもない。向かいに来たお客さんが、「とりあえず、並一つ。あと、持ち帰りで並二つ。」家族が家で待っているのだろうか。いや、家族ならみんなで食べにくるか、全部持ち帰るかだろう。彼は、おそらく、今日は三食、牛丼でしめるにちがいない。

食べ終わったぼくは、おもむろに、「ごちそうさま」「並盛りで280円になります。」思えば、以前にネタにした1997年の頃は並は400円だったのだ。「またの、ご利用お願いしま〜す」はたして、また利用できるのはいつの日か。風邪が治ってなくて吐き気がする。吐くわけにはいかない。牛丼の匂いがするゲップ。ああ、なんだか、はい、私、いまさっき、吉野家で牛丼食べましたみたいで恥ずかしいなぁ。今日からは、吉牛と言っても、牛はなし。

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当時の本 『アーカイブス野口体操』野口三千三、養老孟司、羽島操(春秋社、本体2900円+税)DVDと冊子のセット。変わり続けることが生きていること。身体をほどく。身体の重み。情報は固定されたもの。
当時の世 というわけで、牛丼が消えつつある。
当時の私 風邪を患って20日くらいになる。280円の牛丼を食うために、交通費が1010円かかったらしい。



販売停止から1年。一日だけの牛丼復活の日。約束の11時を前にすでに行列は始まっていた。
2005/02/11

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