[*]Triple axel

Date: Mon, 7 Feb 2000

いつもいつも、傍から見てれば、「どうでもいいやんか」と言われそうなことばかり考えているMucciこと村上であります。さて、ふと、物事が浮かぶよい場所として、「三上」というのがございます。

「さんじょう」と言えば、「参上」とか「山上」とか「惨状」とかをよく聞くところであるが、
「参上」は今時、族な方々の路上の落書きくらいにしか使われないだろうし(使われてるのか?)、
「山上」は登山部かワンゲル部(略さないとワンダーフォーゲル、Wandervogel(独)。わたしは勝手に「彷徨い部」と呼んでいる。ある意味、私は部員、約一名(部長兼任)のワンゲル部である。もっとも山野よりも市街地をよくさまよう。ワンゲルOBの方々、怒らないように。)でなければ、「ふと」浮かぼうにも、なかなか普段、そこにいない。
「惨状」に至っては、あんまし出くわしたくはない。いわゆる「火事場の馬鹿力」で物事が浮かぶのかもしれないが。

「三上」というのは「馬上・枕上・厠上」ということだそうだ。私なら「路上」も付け加えるところである。おお、クワッドルプルだ。(トリプルの上だからと言いたいらしい。しかし、同音異義語からみのノリツッコミが多いね。わし。)

まず、「馬上」。今時、馬を交通手段にする人はいないだろうから、これは現代風に読み変えるのなら、「乗り物の上」ということになるか。私は、免許証はもってるけれど、車に乗らない。なぜなら、よそごとばかり考える癖があるので、危なっかしくて運転を私に任せてられないからである。

私たちは、普段「心臓を拍動させなきゃ」なんて思わないし、「息吸わなきゃ」と意識したりしない。そういうのは延髄あたりから信号が出てるらしい。歩くときに、いちいち、股関節、膝関節、足首、足指の角度を意識して微調整したりはしない。
でも、ハイヒールの女性が膝の伸びる瞬間がないのはイヤだし、厚底の彼女らは、膝や股関節の動きのプリセットが、地面がオフセットされてよくない。と思う。
それはさておき、いわゆる「身についた」運動は、小脳が受け持つと聞いたことがある。つまり、私の運転は「身についてない」ので大脳を酷使せざるを得ないということなのである。と自分では納得させている。

信頼のおける馬だと、おちついて任せられて、頭が暇になるから、いろいろ浮かぶのかもしれない。若干、電車に乗ってる時がそれに近いような気がする。運転は運転士さんに任せている。だまってれば運んでくれる。おまけに、中吊り広告とか、他の乗客の所作や会話など、どうでもよさげな余剰の情報がたくさんある。だが、さすがの私も、電車内でおもむろにモバイラーになって、ネタを書きはじめることはない。

さて、次に「枕上」。「もう眠らなくちゃ」と思ってる時に、あれこれ発想するのでは、頭が興奮してしまって、寝るに寝られない。睡眠は、頭のクールダウンと、情報の取捨選択や飛躍をするためにあるという説もある。たしかに、頭を使った日はなんだか眠りやすい気がするし、夢の中身が突飛なのは情報の選択や飛躍に、後付けでイメージがついたものと思えば、納得が行く。歴史上の偉大な発見の中にも、夢見で思いついたというのもあるらしい。

思いついたことを書き留めるための、ペンと紙を枕下に用意しておくのがよいのか?私の経験上、書いた字は、体が寝ぼけてるので、あとで判読不明なことが多い。そのあたり、ちょっと消費電力が高くなるが、部屋の明かりの豆電球の代わりに、パソコンやワープロを枕元で立ち上げて置くとよいかもしれない。スクリーンセイバーは、やはり、ストレイシープがよいだろうか。ある程度ブラインドタッチが出来ると、後での判読率が良い。

そして、夢で大発見したり、驚いたりしても、飛び起きたりしてはいけない。まどろみつつ、ゆるゆる寝返りしつつ、夢の内容を反芻しつつ、起き出すのがよい。あわてて起きると、その衝撃で夢の中身をあっちに、落としてしまうからである。なお、私は、この方法を実践して、的確な予知夢を見たとか、世紀の大発見をしたという経験はない。

さて、最後は「厠上」である。つまりトイレである。和式より洋式の方が、筋肉に余分な緊張がなくて良いような気もするが、適度な緊張ってのが必要になる場合だってある。

便秘がちな方なら、滞在時間も長いだろうから、沈思黙考する時間もとれようが、私などは比較的、快腸、もしくは下し気味であるから、すぐに終わってしまって、ろくに考えが浮かばない。うんちと蘊蓄、あるいは、クソと空想を両立させようとしたら、無理無理無理っと、出るものも出なくなる。

それでもたまに、ふと、浮かぶところがあって、慌ててメモをとろうとしても、トイレットペーパーではうまく書けない。忘れないように、頭のなかでネタを反芻しながら、お尻を拭いて、パンツとズボンをずり上げて、水を流すレバーをひねる(ロータンクなので)。ジャァーッという音とともに、さっきまで何を考えていたのかも水に流れる。

どうせ、トイレで思いつくようなネタは、トイレにいないとおもしろくないのに違いない。と負け惜しみを独りごちる。あとで思い出せないようなことは、たぶん、重要度が低いか、どうでもいいことなのだ。と言い訳をする。しかし、私が普段考えていること自体が、傍から見ればどうでもいいことなのである。しばしば、大事なことを忘れっぱなしにしていることを棚に上げていることさえ棚に上げている。その棚はおよそ右の側頭部の70度くらいの斜め後上方およそ20cmにある。

---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------
当時の本 『ドン・キホーテのキッス』鴻上尚史(扶桑社, 1333円+税)ショーちゃんによると、21世紀は身体と性愛が主題なんだそうだ。『SPA!』連載のエッセイ集第5巻
当時の世 小二児童殺害容疑者、飛び下り自殺。全国初女性知事、大阪。
当時の私 コーカミさんが推す野口体操って興味深いな。

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