いや、ネタを取り置きしておいてもいいのだけど、まぁ立秋も過ぎたらしいしね。


(む}The Snack of night

Date: Mon, 14 Aug 2000

誰か浜松に行ってたのだろうか。机の上に、お土産の「うなぎパイ」が置いてある。M嬢が、まっくろくろすけを見つけたメイちゃんのような顔をして聞く。「どうして、これ、夜のお菓子なんですか?」

そう、これは「山」と言えば「川」というのと同じくらい。「うなぎパイ」と言えば「夜のお菓子」なんである。「カラープリンターと言えば何?」というCMは浅野忠信の色を良く出しているといえるが、少々、ケレン味に過ぎる気がする。それはさておき。そう、これはいわゆるFAQ(Frequently Asked Question)、日本語で言うと、「よくある質問」なのだ。

(んん、ウナギは精がつくというしなぁ。夜だしなぁ。やはり、グフフだか、ムフフな意味合いがあるのだろうか。)
(ママさんやら、ちいママさんが居たりするカウンターバーってなんでスナックなんだろう。まぁ、ぼくはお父さんのお供で、小さい時にしか行ったことないけど)
(でも、スナック菓子って、コンビニやスーパーでも売ってるよな)
頭がぐわんぐわんするので、勝手に宿題にさせて頂いた。参考のために、その日はうなぎ弁当を食べた。

うなぎと言えば、土用の丑。
土曜の牛だと思って「週末はビフテキ(死語)だ」と勘違いした小学生は累計百万人を下らないと思われるが、中高生、および大学生、また一部一般人を加えると一千二百万人になるという噂である。これは日本の人口のおよそ一割に当たる。なお、噂の出所は私である。

「土用の丑」の「土用」というのは、「旧暦の立春・立夏・立秋・立冬の前18日間」ということだそうだ。そのうち夏の暑い盛りのを特に言うらしい。さて、18日間ということは、十二支で表そうとすると、年によっては二回、丑の日がありそうである。その辺りどうなんだろうか。うなぎの形態から考えて、巳とか辰の方が近そうなのに、なぜに、丑の日なんだろうか。

一説によると、この「土用の丑 うなぎの日」というコピーは江戸時代の発明家で学者で戯作者で畸人の平賀源内先生が考案したという。これは、先生が思いついた日がたまたま丑の日だったのではなかろうか。などと思われる。まぁ、源内先生をコピーライターのはしりだと言うのは、鳥獣戯画を漫画のはしりだというより、怪しいらしい。やっぱコピーライターといえば、糸井先生でしょうか。メイちゃんのパパ。

さて、Yahoo!Newsの中部版 中日新聞8/4号の伝えるところによると、

【静岡県】 焼けた洋菓子独特の甘さと香ばしさを漂わせながら、次々ときつね色の細長いパイが右から左に流れていく。
うなぎパイの製造販売会社、春華堂の製造工場がある静岡県浜松市神田町では七月上旬から八月下旬までフル生産が続く。従業員は連日残業の毎日。それでも足りない分はアルバイトで対応している。
 浜名湖土産として定着しているうなぎパイは、企業の夏休みで帰省客が増える八月十日から二十日が最需要期。この時期はキオスクを中心に通常の二倍に当たる約六十万箱(一箱千円換算)を出荷する。それでも十日から十五日にかけて、場所によっては品切れになるという。
 「今夏は売れ筋がこれまでの六百円から千円の商品にシフトしていて、景気上昇ムードを感じる」(木村正常務取締役生産部長)。暑い夏とともに、“菓子に変身したウナギ”が全国を席けんする。

私も危うく浜松まで取材旅行に行きかけたが、あいにく、脳内稟議が通らなかったので、ヴァーチャルな取材に止まったのである。

「夜のお菓子うなぎパイ」には恐るべきことに、姉妹品として、「真夜中のお菓子うなぎパイV.S.O.P.」という製品があるらしいのである。なんと原材料にブランデーまで使われているのである。

小さい時、チョコレートでさえ、「子供がたくさん食べたら鼻血や吹き出物がでるからだめ」と言われ、さらにウイスキーボンボンなチョコレートキャンディーなんかはお酒が入ってるから子供は食べてはいけない大人のお菓子だった。 「大人って!!」と、一時期、私の中でブームになっていた「おとなのふりかけ」のCMの子役にならって、枕を叩きつける。いや、ぼくの方が彼より早かったかもしれん。なんちて。

チョコレートのバレンタインは、うなぎの土用の丑と並んで、業界の策略であろう。

しかしである。実は、「朝のお菓子」「昼のお菓子」も存在するらしいのである。「朝のお菓子:すっぽんの郷」「昼のお菓子:えび汐パイ」というのが同じ業者から売り出されているという。さらにそれらの詰め合わせ「フルタイム」というものまであるらしいのだ。

そのメーカー:春華堂さんのホームページによると、 

 『夜のお菓子』というキャッチフレーズは二代目社長の考案で、「一家だんらんのひとときを『うなぎパイ』で過ごしてほしい。」という願いを込めてネーミングしたものです。折りしも当時、浜松は高度経済成長で夜の繁華街が賑わっていた時代。このキャッチフレーズを目にしたお客様で、精力増強のうなぎと結び付けてあらぬ解釈をしてしまった人も多かったようです。

 すっぽんエキスの入った「朝のお菓子 すっぽんの郷」のキャッチフレーズは、朝、疲れが抜けない時等、お出かけ前にお召し上がり頂くと気分も爽快になります。と言う意味で名づけられました。
 「昼のお菓子 えび汐パイ」は、駿河湾特産の桜えびをふんだんに使ったパイです。お昼のティータイムなど、カルシウム補給にお召し上がり頂けたらと名づけました。

しかし、パッケージの解説には

 発売当初、うなぎパイのパッケージは、浜名湖の水をイメージしてブルーを使っていましたが、今一つウケがよくなかったので、いっそのこと『夜のお菓子』というフレーズにふさわしく、まむしドリンクの赤と黒と黄色に切り替えようということになり、今のパッケージの原形が完成しました。

とある。自分ちで誤解を誘導しているではないか。謎が謎を呼ぶ。

「まむし」と言えば、蛇である。やはり、土用の巳の方が良かったのではなかろうか。「まむし」と言えば、大阪風のうな重で、ご飯の間に、うなぎを挟むから「間蒸し」なんだとか、ご飯をうなぎの上に「まぶす」からだという説もあるが、実はわたしは、そういう、うな重を食べたことがない。

でも、うな重っていうなら、よほど、まむしの方が「重」って感じもするなぁ。職場の食堂では、うなぎ弁当はやや割高感があるのか、多少、売れ行きがにぶい。土用の丑に便乗してもなお、この体たらくである。ふつうの弁当の方が早くはけるし、販売数も多そうだ。

ちょっと割高の方が、なんか「んん、贅沢してる」と思えたりするし、「うなぎを食べれば、うなぎのぼりに元気が出るのだ」と思い込めれば、少なくとも、帰途に着くまでに、もう一頑張りできる気がする。まぁ、しばしば、もう一頑張りが、帰路の徒歩のエネルギー に変わるのだけれど。

---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------
当時の本 『それは言わない約束でしょ?』わかぎえふ(集英社文庫,438円+税)ふっこ姉さんにかかると、たぶん、ぼくは、ぼんぼんなんやろなぁ。と思う。
当時の世 少し過ごしやすくなった気がするのは、気のせい?
当時の私 通勤電車が空いてるってのはいいね。

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まっくろくろすけは、「すすわたり」という妖怪だそうです。人が長く住まなかった家なんかが住みかになるそうです。ばあちゃんが言ってます。メイちゃんはさつきさんの妹で、宮崎駿監督のスタジオジブリ作品『となりのトトロ』のヒロインです。

「おとなのふりかけ」は永谷園の製品です。

みやっぷさんの秘宝館に行けば、画像付きで見れます。○○のお菓子シリーズ

うなぎパイの袋には" A snack for nights"と書いてある。一枚を何夜にも分けて食べるような風に読んでしまうのは、わたしが、へそまがりだからか。