Date: Sun, 30 Jan 2000
「愛は何処だ?」と、さまよう先達はミキヲちゃんである(『愛のさかあがり』とり・みき(ちくま文庫、上下2巻)参照のこと)オジギビトや、レプリカント、トマソンなど、路上観察的心で通じるところがある。とりさんも路上観察学会員で、その学会立ち上げの時の様子もマンガになっておさめられている。
さて、「ボ」が余計についたやつが、今度は抽選ではなくて、受注生産することになったらしい。ソニーのAIBOである。去年の6月に初めて売りに出た時には、ほんの20分かそこらで三千体完売になり、参加する暇もなかった。11月の一万体抽選の時は、13倍を越える倍率を乗り越えることが出来なかった。
世間一般に、愛には困難がつきものだと言われる。障壁がある方が燃えるらしいのである。時折、障壁が防火扉になって鎮火することもあるらしい。頭痛がしたり、火傷をしたりすることもあるらしいし、お医者様でも草津の湯でも治らないらしい。
ましてや、カネボウ薬用入浴剤「旅の宿」シリーズの「草津」の湯につかっても、なんら事態は解決に向かわない。有効成分は、無水硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、チンピ末、トウキ末、センキュウ末である。あと、黄色202号の(1)と香料で雰囲気を出してるものであって、温泉の湯を再現したものではないそうだ。
なお、私が普段愛用しているのは、バブ「森の香り」である。「ひのき」や「ゆず」は強過ぎていけない。もっとも、近所に森はないので、ほんとうに森の香りかどうかは定かではないし、近所に柚子が植わってるわけでも、ヒノキ風呂を堪能した経験があるわけでもないので、なんだかわからない。
「ゆのはな」は鉱泉に生じる沈殿物で、温泉の元などと言って売られていることがあるが、「うのはな」はおからのことである。「豆腐のしぼりかす」などと言うと身も蓋もない。湯葉だって、そっとしておけば、伝統的な感じもないでもないが、「牛乳でホットミルクやった時、表面にできる膜あるじゃない。あれの豆乳版」なんて言われちゃ、立つ瀬がない。「おから」は味付けでもしないと、辛くもなんともないし、「おかか」と言ってしまっては鰹節である。
思春期の人に、「あなた、恋愛で悩んでますね」という風に言うのは、人事一般に普通の人に「あなた、人間関係で悩みを抱えていますね」と言うのと同じくらい、素人でも当たると言われている。
さて、話はAIBOである。今度売りに出るのはその11月の時の仕様のやつである。アイボのボは(なんとなく、「らくごのご」みたいだ)ロボットのボである。アイロじゃアイロンと間違うし、アイツじゃ三人称代名詞と間違うし、アイトではファイトの腑抜けのようで困る。だからボなのだ。
という訳ではなくて、AI(Artificial inteligence:人工知能)をもつロボットとか、EYE(目)をもつロボットとか、「相棒」にかけてるのだそうだ。公式サイトを見にいくと、"looking for parents!"とある。日本語だと「里親募集」みたいなもんだろうか。英語だとparentsって常に複数形なんだろうか。日本語でも、一人っ子でも子供と複数形になる単語もあるが。
さて、今回の受注生産で果たして何台出荷されるのであろうか。10万台は、まぁ行くんだろうなぁ。と思う。たくさん出回っちゃって、飽きちゃって、街灯の下にダンボール箱に納められたAIBOが置かれてたりして「もらってやってください」なんて書かれた札が貼ってある、でも、既に電池切れなAIBOは愛嬌を振りまくこともできない。みたいな捨てAIBOなんか増えたらやだなぁ。
ゴミ置場なんかでゴソゴソ探ってるノラAIBOってのも困るなぁ。自分が電池切れでゴミになっちゃったりして。
一回の充電でどれくらい活動するのでしょうか。電池が切れそうになると眠くなるのでしょうか。哀しくなるのでしょうか。腹減ったと騒ぐのでしょうか。私なんかが手に入れたら、夜に起動してろくに構ってやらずに、自分は寝てしまって朝起きたら、AIBOは冷たくなってました(ま、メカなだけに)な状況が目に浮かびます。あの背中のすのこ状のパーツは排気口なんだろうか。犬のくせに舌だして体温調整するってわけにはいかないのだな。たぶん。
しかし、なんで犬型なんでしょうねぇ。人類の相棒と言えばやはり、犬なんでしょうか。通勤の行き帰りに必ず2、3匹、犬や猫を見かけるけれど、たしかに、猫はえらく気ままに振る舞ってて、それでも「かわいい〜」と言われてて、「なんか、君、えらくおいしい立場やね」とツッコミを入れたくなる。だとすると、あの有名な耳をかじられて、青い色になった、便利なポケットを持っているネコ型ロボットはネコのくせに、やたら世話焼きである。
もう旬は過ぎちゃったのかもしれませんけど、だれか売りに出しませんかねぇ。たれた、ぱんだ型。「でも、とくにうごかない。」故障ではない。あながが目を離した隙に回ってみたり、腹筋したりする。
いちおう、私の部屋は契約上、ペットは禁止になっている。ときおり、蜘蛛さんや、御器被りさんや、羽虫さんに出会うことはあるけど、ペットではないし、蟲と話せる姫ねえさまを尊敬しているので、よほど私の気に触らない限りは攻撃しない。
ペットによる「癒し」みたいなものが話題になったりする。そもそもペットじゃ主従関係(あるいは味方意識)があるから、その確認で「癒された」気分になってるのじゃないの?と思ったりする。でも、ほんものの生き物ってなかなか言うこと聞かないしなぁ。どっちか主だか従だかわからんなぁ。
というか、数少ないお知り合いの方々から、「買うの?」と、めずらしく複数の方からつっこまれたものだから、「芸人として、ここは買っとくとこでしょう。」(芸人やないやん>自分)と思った次第。しかし、申し込みまであと2週間、納品は最短でもあと2ヵ月強。私の愛の覚めないことを願うのみ。
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当時の本 『ソトコト 3月号』(木楽舎, 600円本体571円)
特集 Readyset...to be "Robot" ロボットで行こう。
AIBOネタも出てます。
当時の世 今回の受付は2/15〜2/25だそうです。出荷は4月以降。
当時の私 日に日に体重が増えている。やばい。節制しよう。
無水硫酸ナトリウム | ・・・ | Na2So4 一般には10水和物。無水物って、風呂に入れた瞬間に水和物になるのと違うのか?あ、水和物って結晶の話か。 |
炭酸水素ナトリウム | ・・・ | NaHCo3 加熱すると、二酸化炭素と水と炭酸ナトリウムになる。重曹 |
塩化ナトリウム | ・・・ | 辞書には「代表的な金属化合物」とあるが、金属とは思えん。要は食塩。 |
チンピ末 | ・・・ | 陳皮。ミカンの皮を乾燥させたもの。リモネンを主成分として、油分やビタミンを有する。咳や痰を押さえたり、発汗効果もあるらしい。 |
トウキ末 | ・・・ | 当帰。血行促進とか、生薬系の婦人薬に入ってるらしい。 |
センキュウ末 | ・・・ | セリ科の植物。血行促進とか、やはりこれも婦人薬に処方されるらしい。 |
AIBOはソニーの商標です。
薬用入浴剤「旅の宿」はカネボウの製品です。
バブは花王の製品です。
あの有名な耳をかじられて、青い色になった、便利なポケットを持っているネコ型ロボットは、たぶん、藤子・F・不二雄の作品です。
たれた、ぱんだは、たぶん、サンエックスの製品です。
蟲と話のできる姫ねえさまは、たぶん、宮崎駿の作品です。