[*]Fratuku Kafka

Date: Tue, 23 Nov 1999

朝起きると、こけしになっていた。
私はたけしであったはずである。いや、こけしの首は確かクルクル回る。私の首は回らない。私は埴輪になっていたのかもしれない。いや、私は別に黒目がちなつぶらな瞳はしていないし、口はなるべく閉じるようにしている。

カレンダー上、休日なJapanese thanks giving dayの朝にぼんやりと目を覚ましながら、「特にすることないし、まだ片づいてない仕事もあるし、出勤しようかな」なんて思ったりするのは頂けない。自分の部屋だって片づいていないのである。実は人の姿はしているが、私はズボラ星人なのかもしれない。

私は、ここ数カ月、見えない手によって首ねっこをつかまれている。小さいときに苛めたネコさんの祟りかもしれない。いや、単にいわゆる肩凝りに違いない。ズボラ星人は意外と凝り性なんである。

そこで、今回手に入れたのは、松下電工の低周波治療器オートパルス「くびもみ」という製品である。関西弁が社内標準語であるという噂も高い松下さんであるが、はたして、このネーミングに、企画会議の際「そのままやないけ」というツッコミはなかったのであろうか。いや、あったに違いない。

それにしても最近の電化製品の名前は、喫茶店の店名かそれともスポーツ誌の見出しかというくらいダジャレ度が高いような気がする。(全国の喫茶店のマスター諸氏、スポーツ誌記者諸氏、御免下さい)いや、「くびもみ」ではシャレにさえなっていない。

さて、またしても形状がウルトラアイに似ているのであるが、デュワ!と目に着けてはいけない。あくまで首用である。また使用説明書によると、首の前から装着するのもいけないとある。

しかし、「いけない」と言われると、ついやりたくなるのが人間であるのが浦島太郎や鶴の恩返しの頃から、最近の「買っては…」まで、世の常である。ということで、試しに首の前に装着してみると、気持ちいいどころか、首を締められてるようで、よろしくない。(だったら、するなよ)

「オフィスでさりげなく使える」とあるのだが、ロングヘアの人なら何気に隠れていい感じかもしれないが、私も以前のように髪を伸ばしていないし、いざ、使うと、さりげなくというよりは、ガロ星人に乗っ取られた人間のようである(ガロ星人については、「ウルトラセブン1999最終章6部作 第2話『空飛ぶ大鉄塊』」を参照のこと)

説明書きには(たぶん)きれいなおねえさんが、首にくだんの装置をセットしている写真が載っている(言うまでもなかろうが、右の写真は私だ)。手タレとか、足タレというのは聞いたことがあるが、うなじタレという方もいらっしゃるのであろうか。首周り許容範囲は28〜40cmとある。やはり女性用なのであろうか。実測はしてないが、以前ワイシャツを買いにいった時、私のシャツは首周り40だったような記憶がある。

首にセットしたパッドから微弱な電気が流れて、首の筋がピクピクと引っ張られる。実際のマッサージは外部から揉むのであるが、これは内部から電気で揉むらしい。ガスコンロと電子レンジの違いみたいなものであろうか。

類似の治療具として高周波治療器というのもある。こちらは別にピクピクしない。筋を刺激するというより、血行を促進するのがメインなのだそうだ。大学生の時に、高周波の刺激でアフリカツメガエルの血流量が増えたとかいう論文を見せてもらったような記憶がある。わたしは「蛙も肩凝りがあるのだろうか。蛙はかなり撫で肩だが。蛙の首はどこであろうか。くびれてないのだが。」と思った。

素人目には低周波の方が、目に見えて「やってる」という感じがあるので効きそうな気もする。

「おし」「もみ」「さすり」の3つのモードが選べて、それらを混ぜた「自動コース」もある。一回の施術時間は15分ほどである。購入価格は6500円。ふつうのマッサージの一時間分くらいの値段ではなかろうか。

あんまり強くしたり、風呂上がりで首が湿った状態で使うと、電気が流れすぎてピクピクでなく、ピリピリする。脳に電気的刺激を与えて痛みをブロックするというわけではない。

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当時の本 『構造主義科学論の冒険』池田清彦(講談社学術文庫, 本体860円)高尚におちゃらけつつアジテートって感じか?「科学的」のしくみ
当時の世 自衛隊機墜落、高圧線を切断、停電
当時の私 首がかかっている(注:仕事ではない)

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凝り初めに使うのが効果的らしいので、私の場合は、すでに手遅れである。