(む}Unrecognaizable

Date: Mon, 15 Oct 2001

さて、2週連続で休日なしで働いています。Mucciです。この日は、「もう、今日は絶対、出社してやんねぇ。」と布団にしがみついていたのですが、止むを得ず目が覚めて、空は抜けるような青空。ゆっくり洗濯物などして干して、ゆっくり髭をあたって、2箇所ばかり切り。ゆるゆると、結局、出勤しました。なんでゆるゆるかと言うと、くたびれて速く動けないの。普段、暮らしていて、休日だって生きてることには変わりないのに、どうして仕事すると、こんなに疲れるのだろう。と思います。ま、疲れるからこそ、給料という代価が支払われてるのだろうな。なんて、思います。なんだか、ろれつが回らなくて、言語障害が出てます。はて?ろれつって何?辞書を引くと、「呂律」と出てました。「呂」という漢字を「風呂」以外で見るのは、珍しくて、すこしおもしろいと感じました。

ろれつ【呂律】      ことばの調子。
   ━が回らない   舌がよくまわらず言葉がはっきりしない。                       

喋り言葉は、ろれつが回らんと、何を言ってるのかわかりません。ま、はっきり喋っても、何を言ってるのか分からないと言われることも、よくあります。

かき書き言葉は、どうかというと、私はそもそも字が上手でなく、ミミズの這ったようなとか、折れ釘みたいなといった自筆になってしまう上、時折、手が震えるので、自分でも判読不能な今日この頃です。いや、決してアル中の発作ではありません。そう、呂律が回ってなくても、酔っ払ってるのではありません。

字を書くのがあまり得意でない私は、もっぱらワープロというかキーボードを使って打つことが多いです。でも、ここでもミスタイプの率が高くなったりして、ひょっとして、Enterキーよりも、Backspaceキーの方が、活躍してるのじゃないかと思えます。よく使うキーの上はシボが取れてしまってツルツルになっています。

本人の書き間違いが多いのに、日本語変換がアホなのか、「かきことば」と打って変換しようとすると、夏期、夏季、下記、柿、火気、牡蠣、火器、花器、花卉言葉、ご変換誤変換にも程があります。日本語は同音異義語が多くてむずかしいですなぁ。牡蠣なんて読めても書けないし、花卉なんて、そんな字があることすら知らなかった。ちなみに、花が咲く草という意味だそうだ。

かき【花卉】
(1)花の咲く草。草花。
(2)観賞用に栽培する植物。

さて、話題の「炭そ菌」。「そ」だけ平仮名なのが、なんだか「皮フ科」みたいですな。普通に「たんそ」と聞けば「炭素」でしょう。「炭素」だって、黒鉛もダイアモンドもどっちも炭素なのに、全然ちがいます。世界は不思議です。炭なのになんで、黒「鉛」なんでしょう。ちなみに、鉛筆の濃さ、固さをしめす記号のHはハードなので固さを表し、Bはブラックなので濃さを表すのだと聞いたことがあります。かと言って、Hがどんどん増えると鉛筆が、備長炭や、ダイヤになるわけではありません。

備長炭というのは、備中屋長衛門さんが元禄時代に創世創製したのだそうです。備中というと、今の岡山県辺りですが、長衛門さんは紀州田辺にいたそうです。ま、紀伊国屋書店の本店が東京にあるようなもんでしょう。

話は戻って、「炭そ菌」。漢字で書くと「炭疽菌」だそうです。この「疽」って字が、「壊疽」以外で見るのは初めてとは言わないけれど(でも、初めてだなぁ。たぶん。)、これも面白いかというと「呂」ほどではありませんでした。「炭疽」と打ち込むために、

た、ん、そ、変換、後退、え、そ、変換、左カーソル、後退

とタッチタイプしなければならなくなります。だけどまぁ、「炭疽」なんて辞書登録しても、今後使うかどうか???

先輩のT澤さんの話によると、その昔、まだ印刷に活字が使われていた頃、新聞屋さんが、活字の数を減らすために、普段あまり使わない文字を決めて平仮名で代用してしまったからだという話です。そんな、Web publishingのご時世に、そんな昔の癖が残ってるのが不思議です。もっとも電子出版にしても、JIS漢字問題、いわゆる森鴎外問題みたいなのが起こります(鴎の篇の「匚」の中が、「品」だったり「乂」だったりする)。漢字の故郷の中国の人の名前だと、その自体字体の漢字がなくて、「〓」とゲタの足跡になってる場合もあります。

そうか、そんな経緯があったのか。と、大手新聞社のホームページを見に行くと、朝日と毎日は「炭そ菌」。産経は「炭疽(そ)菌」と読売は「炭疽(たんそ)菌」でした。

---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------
近頃の本 『感じない子ども こころを扱えない大人』袰岩奈々(集英社新書,660円+税)自分の中の子供心に語りかけてみる。「こんな風に言われたら、どう感じる?」ちなみに、著者の苗字は「ほろいわ」と読むそうです。
近頃の世 アメリカで炭そ菌騒ぎ。
近頃の私 遅刻しないようにと気を張るよりも、いっそのこと遅刻してゆっくり歩くと、町の光景が不思議に見える。あきらめる。がんばらない。でも、前に進む。

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引用部の辞書の表記は、三省堂 『ハイブリッド新辞林』によってます。

三省堂『全訳 漢字海 漢辞海』によると、

[呂] リョ(漢音) ロ(呉音)

語義 
  1. 背骨「背呂(セキリョ)」
  2. 単音階 短音階。音階の十二律は陽律と陰律に分かれ、陰律には六種あって、「六呂(リクリョ)」と総称する。
  3. 周代の国名「有呂(ユウリョ)とも称した。伝説では四岳(=堯(ギョウ)のとき、義和(ギワ)の四人の子)の後裔が封じられたとされる国とされる。今の河南省南陽の西にあった。
  4. 姓。
なりたち 
背骨。象形。昔、太嶽(タイガク)の官のものが、禹(ウ)にとって、心臓や背骨のよう(に大切)な臣下であったので、呂侯(リョコウ)に封じられた。「膂」は篆文(テンブン)の呂で、「肉」と「旅」から構成される。

呂律 1.音楽の調子。六呂(リクリョ)と六律(リクリツ)。 2.ものを言う調子。(日本固有の意味。)
どうやら、10/17辺りから、朝日新聞も「炭疽(たんそ)菌」という表記になってるみたいです。10/18追記。
毎日新聞も「炭疽(たんそ)菌」という表記を始めたもよう。10/19 追加