(む}Hard-boiled nihilist

Date: Mon, 22 Oct 2001

コロンブスの卵というお話がある。ご存じな方も多いと思われるが、「卵を立てて置けるか?」というのに対して、みんなが卵をコロコロ転がして、苦心惨憺してるとこに、コロの旦那は、ベシっと、卵のお尻を割ってしまって立てて置いてしまった。というお話だ。旦那、そりゃ無茶だ。みんな、割ってもいいなんて思ってない。いや、みんなの思い込みのせいである。

もっとも、これもゆで卵でないと成立しない。生卵では割っては中身が漏れるからである。上手に割って中の薄皮一枚残せば、漏れずに済むかもしれない。それにしてもあの薄皮、ゆで卵を割るときはなんだか残りやすい。頭の方だか、お尻の方だかから割るととれやすいと聞くが、本当だろうか。さて、今、先細り側を頭と私は呼んでいるが、有精卵で、ヒヨコさんが出来る場合、ヒヨコのお尻は卵のお尻と一致するのであろうか。有名なハンプティ・ダンプティや、あるいは、マクドナルドのてりたま、だか、月見だかのバーガーのキャラクタも細い方が上になってるではないか。

ちなみに、私が小学一年生の時の国語の教科書の初めの教材は、たしか、孵化してまもないヒヨコが「あかるいな。」と言うところから始まっていた。「うちがこわれたの?」と犬だかに聞かれていたのである。ヤドカリじゃないんだから、殻がうちなわけなかろう。カリメロ君は帽子にしていたが。犬と遊びながら、殻を「ふたつにわけよう。うれしいな。」卵の殻を二つにわけるだけでうれしいのである。子供心とは不思議なものである。私は、失ってしまったのだろうか。雨が降ってきて、「たいへん、たいへん、ひとつにしよう。」雨が止んで、「いぬさん。ゆうやけよ。きれいだね。」という筋書きだったと思う。

さて、コロの旦那の方法は、ゆで卵でしか成立しない。では、目の前にある卵が、ゆで卵か、生卵か、判別するにはどうしたらいいか。これも、多くの方がご存じであろうが、机の上でクルクル回してみると分かる。生卵は机から落ちて割れて、それが生と分かるのである。というのは冗談で、ゆで卵のほうが中身がしっかりしているので、よく回るのである。しかし、その周り具合で、半熟か固茹でか。ってとこまでは分からない。

だが、そんな判別方法を知ったところで、よほど強度の健忘症にかかってない限りは、冷蔵庫から出してきたのは生卵、鍋から出してきたのはゆで卵であろう。

コロの旦那に「目の前にあるのは、ゆで卵か、生卵か?」なんて聞いたらきっと、「割ってみればいい」というのではなかろうか。なにせ、旦那はアメリカ大陸を発見しても、「インドだ」と言い張っていたくらい無茶な人だからである。つまり、彼はアメリカを発見してはいないし、発見と言われても、そこには原住民がいたのであるから、余計なお世話なのである。なお、コロンブスの卵の説話は、後付のおひれで、実際にコロンブスさんがやらかしたわけではないという説もある。

半熟か、固茹でか、それが問題だ。って、自分で調理するのなら、茹で時間で調整がきくだろう。温泉卵もどきにしたければ、カップラーメンなんかの発砲スチロールの容器に熱湯を入れて、そこに卵を入れて待ってあげれば、卵が「いい湯だな。アハハン。」と言って(言わないが)、いい感じになる。普通のゆで卵が白身から固まるのは、単に熱源に近いからであって、ゆるゆる温めれば、黄身の方が固まりやすいのだそうだ。

ハードボイルドというのが、実は固茹で卵であることを知るのに、私は約15年の歳月を要した。その言葉自体は、幼年の頃見ていたテレビの刑事物や探偵物で知っていたのだが、その単語の意味はつまり、ダンディだかニヒルだかいうやつに違いないと思っていた。もっとも、ダンディだかニヒルだかいう単語の意味も良く分かっていなかった。

「ダンディ」は、なんか音が「探偵」みたいだし。ニヒルは本来は現実の価値を否定するような虚無的なという意味らしいけれど、私に言わせれば、なんだか「ニヒ」の辺りがなんだか半笑いみたいでおかしいのである。つまり、「ニヒる」というのはどこか引きつったような笑顔をすることのように感じるのである。そう「ニヒル」の音がなんだか「皮肉」に聞こえる。

昨晩、『あるある大辞典』を見てたら、オムライスの卵をふんわりさせるコツということで、卵を白身と黄身に分けて、白身だけ先に20秒かけて溶く。あとで黄身をあわせる。みたいなことをやっていた。つまりは、メレンゲを黄身で味付けするような感じなんだろう。

「あるある」と、「まるまる」と、「はなまる」は要注意だ。これらのせいで、スーパーから特定の品物が店頭から消え去ることだってあるらしいのだ。みなさん、にわか信者だねぇ。健康嗜好という思考は、多少病んでいる、と思う。ってか、「る」には要注意である。小さい頃のしりとり遊びでは、「る」の手札は「ルビー」しかなかった。手元の辞書でも「る」の項は6ページしかなく、さらにその大半は外来語である。

Q. なんて読むでしょう。
A. でたらめ。

ひらがなを覚えはじめたころ、「め」と「ぬ」、「ろ」と「る」の関係はなんなんだ?と、みなさん思いませんでした?

オムライス。なかのチキンライスにもうケチャップの味ついてるのに、なんで、さらに、上からケチャップをかけてたのだろう。きっと、あの、かける行為が、子供心になんらかの儀式的意味をもっていたのに違いない。

プレーンなオムレツを見て、「なかに、じゃがいもとか、にんじんとか、挽き肉とか、おかず入ってないとオムレツと違う。これじゃ、玉子焼きじゃないか」などと、つい最近まで思っていたのは私である。

---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------
当時の本 『ペンギンの世界』上田一生(岩波新書,700円+税)南極の氷の下には、たくさんのペンギンの遺体が埋まっている。その血肉はプランクトンを育て、それを食べた魚をペンギンがまた食べる。アザラシなどに襲われて、食べられたり、土に、いや氷に帰る。
当時の世 世間のことがよくわかってない今日この頃です。
当時の私 3週連続土日なしで働き中。ま、土日は残業せずに帰ってる。仮面ライダークウガの第11巻と特別篇のDVDを買う。五代雄介が言う。

「俺はただ、俺ができるだけの無理をしてる。それだけだよ。」

特別篇を見る。スタッフ向けに制作されたという楽屋落ち風のネタに少し笑う。幻のEPISODE 50 『乙彼』

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