(む}Absent-mindedness

Date: Mon,19 Mar 2001

先週の金曜日は退職される方の送別会であった。最近、原則的に、独り酒を控えているつもりの私は、「あ、飲み会だから、こういう時に飲んどかないとな。」とばかりに、勝手に飲んで、当のご本人とは別れを惜しむわけでなく、いや、先日も近所で出会ったので、ひょっとすると、これからもひょっこり出会うかもしれないなぁ。なんて思いつつ。

待ち合わせの場合は、二人して互いを探すよりは、片方がじっとしていた方が、出会う確率は高いという計算もあるという。実際は、その、じっとしている場所が、勘違いに伴うものだったりしたら、出会う確率は限りなく0に近くなる。ま、最近だと、みんな携帯もってるから大丈夫か。

待ち合わせでもない二人が、偶然出会うのは、それこそ、かなりの偶然であるが、時と場所によっては、かなりの確率で出会う。何曜日の何時頃に、どこそこを通るみたいな情報を押さえて、偶然を装って、そこに赴いてはストーカーみたいである。敢えて、そこを通らないようにするのも、意識的にさけているようで感じが悪い。まぁ出会わないのだから、感じの悪さは伝わらない。ほんとに偶然出会って、対応が悪い方がもっと感じが悪くなる気もする。

翌朝、目覚める。(あ、俺だ。)と気付く。これは、よくある。夢の中のストーリーに没頭しちゃって、現実の俺が、私という一社会的個人であることを、すっかり忘れてしまっているのである。

で、ふと、思う。(あれ?昨日の晩、俺、どうやって帰ったんだ?)どうやら、途中から記憶がない。

そう、毎度のように、宴も中盤を過ぎたあたりから、小グループが形成されて、自分はどこに行ったらいいのかよくわからず、ぽつんと周りを見つつ、ビールをあおりつつ、適当に話をしていたような気がする。これでは大勢といても独り酒ではないか。しらふでも冷たいと言われる私は、しこたま飲んでると、氷点下なことを言ったんじゃないかと心配になる。(当の本人は冷たいなんて、実は思っていないところが質が悪い。)

朝起きると、ぼくは、しっかりパジャマ替りのトレーナーに着替えて布団の上にいた。枕元にはデイリーヤマザキのコンビニ袋が置いてあって、中には、おにぎり2個と、ウィダーインプロテインと生茶と、そして、緑のたぬきが入っていた。おにぎりは、おかかと、鮭だった。

私の部屋の近所にはデイリーヤマザキはない。果して、私は、どこでこれらを購入したのであろうか。察するに、最寄りよりも一つ手前の駅で降りて、歩いて帰る途中に、たしかに、その店はある。ダイエットのためというか、運動不足だろうから、近頃、一駅前で降りる習慣があるので、そのせいであろうか。そういえば、袋を手に下げて、千鳥足で歩いてた気もする。

それはさておき、土曜日は、業者との打合せで休出の予定であった。そこではたと気付く。財布と、身分証と、部屋の鍵がない。酔っていたといえど、そんなものは、いつもの場所に置いていても良さそうなものじゃないか。

意識は大脳新皮質の機能だと聞いたことがある。本能的な所は旧皮質が受け持っていると聞く。ルーチン的な作業は小脳が身につけていると聞く。しかし、私は、しらふでも、財布やカードを部屋に置き忘れて出掛けそうになって、玄関から居室に戻ったりするくらいだから、ちっとも身についていないともいえる。

それにしても、だ。6畳かそこらの広さのこの部屋で、どうして、見つからないのだ。いつもの場所には小銭入れしかなかった。なぜか、そこには切符が挟まれていた。通勤定期の範囲内なのに、なぜか私は、切符を買ったらしい。で、切符がここにあるということは、降りるときは定期を使ったのだ。

札入れはデイパックのポケットの中にあった。(んん、身分証なくすと、なんか再発行のための書類書かなきゃならんのだったっけかなぁ。とりあえず、気分転換に、ビデオ見るか。ん?)身分証は、なぜかDVDプレイヤーの上にあった。しかし、鍵がない。鍵はないけど、今、私が部屋にいるということは、鍵を開けて中に入ったということだ。以前に、玄関に鍵をくっつけたままで朝まで放置してたことはあるが、どうも、今回は玄関にくっつきっぱなしでもない。鍵をかけずに出掛けるのは、なんだか、抵抗があったが、ま、特に財産が部屋にあるわけでなし。と出掛けた。

ひとしきり、仕事をしたあと、部屋に戻った。(もしも、部屋についたら、何者かが侵入してるのに、鉢合わせしたらどうしよう。でもって、そいつが、凶悪な凶器を持ってたらどうしよう。)などと妄想を膨らませながら帰ったが、、、

もう一度、復習しよう。偶然、私が鍵をかけ忘れて、偶然、そこに、泥棒が入ってきて、偶然、その泥棒が狂暴で、偶然、私がそこに鉢合わせする確率は、なんらかの計画性がなければ極めて低い。

そこは、いつも通り、散らかった自分の部屋であった。(これじゃ、泥棒が来て散らかしても、わからんな。)と思いつつ、とりあえず、少しだけ整理しつつ鍵を探した。

ない。どこにあるのだ。このまま何日も鍵なしで過ごすのは、それはそれで物騒な気もするぞ?つうか鍵付け替えるのなら管理会社さんになんか届けないといかんのかなぁ。ああ、天気が良いと鼻がムズムズするなぁ。目もかゆいなぁ。なんて思いつつ、薬箱に手を伸ばすと、なんでか、そこに鍵は入っていた。

私は、自らの行いに恐怖した。いや、たしかに、私の行動に違いないのだけど、私はあずかり知らないのである。そう、遠くない未来、わたしが惚けたとして、こんな感じなんだろうか。私はそうだとして、親しい他人が惚けると、それはその人なんだろうか。んん、惚けても、その瞬間、刹那はちゃんとした行動したいなぁ。などと、問題を俯瞰したつもりで大きくしてごまかしてみようとしてみたが、要するに、飲み過ぎたのである。反省。

---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------
当時の本 『笑い』ベルクソン著、林達夫訳(岩波文庫, 560円+税)場のこわばり、不自然な自動化が笑いの起爆機構であるらしい。
当時の世 気温が低いと、花粉は少ないが、寒いのはやだな。
当時の私 ボウリングマイブーム中、ハイゲーム232、アベレージ190/3ゲームをマークした。てりたまバーガーと、たこ焼きもマイブーム中。それぞれ週に3,4回食べてる。

デイリーヤマザキは、食パン大手の山崎製パンの経営するコンビニです。
ウィダーは森永製菓の製品です。
生茶はキリンビバレッジの製品です。
緑のたぬきは、マルちゃんブランドの東洋水産の製品です。