[*]Lifeholic

Date: Mon, 18 Oct 1999

9月が暑かったせいもあるのだろうが、10月の寒さがしみる。
いや、嘘だ。
暑がりのぼくには、心地良い涼しさである。

フリースやジャケットを羽織っている人もいる電車の中で、シャツ一枚のぼくは汗をたらたら流している。お願いだから、ぼくのために暖房をかけないでくれ。「弱冷車」のラベルつきの車両に載ったところで、おそらく、それは「弱暖車」というわけではなかろう。

ヒトは暑さよりは寒さの方が耐性があると聞く。やはり、恒温動物として自分が熱源であるからだろうか。大学生の時に、熱工学の授業で、「教室の壁が断熱材で出来ているとする。この教室で、今の人数の学生が授業を受けたとして、授業が終わる頃にはこの教室は何度になるか」という問題を出されたことがある。

その計算結果が、常識的に考えて、すごい高温になってしまうことから、答えを書くのを躊躇してしまったような記憶がある。だが、常識的に考えて、教室の壁が完全に断熱性であることはないのである。ただ、これから言えるのは断熱をしっかりすれば、結構、寒さに耐えられる。ってことだろう。

かように、私たち(私だけ?)は自称「常識」に縛られて生きている。自爆行為を控えて、自縛行為をするナルシストのマゾヒストである。

職場で風邪だか結核だか知らないけれど、咳き込んでいる人が散見される。ふと、あらためて気付くと、自分も咳き込んでいる。咳というのは、免疫反応で、物理的に異物を除去しようとする反応であると聞く。異物とはつまり、自分でないなにかである。咳き込む私は排他的だ。

咳き込みながらも、タバコを吸う人が滑稽だな。と思う私は、吐きそうになりながら、酒を飲む。タールカットのライトタバコをのむ人を笑い飛ばしながら、糖質カットのライトビールを飲む。

アルコホリックじゃない証拠だと言いながら、先日、三日ほど酒を飲まない日を過ごした。三日しか続かないのだから、いわゆる三日坊主ではないか。という説もあるが、私は、久しく三日どころか、二日連続で仕事を休んでいないので、だとすると、立派なワーカホリックである。

私は賢治という名前でないけれど、

汗ニモマケズ 風邪ニモマケズ
冷房ニモ暖房ニモマケヌ丈夫ナカラダヲモチ
欲ハナク タマニイカリ イツモジロリト睨ンデイル
一日ニ麦酒一升ト 水ト少シノツマミヲタベ
アラユルコトヲ ジブンノ感情ニイレル
ヨク見聞キシ怒リ スグニ忘レル
河原ノ側ノ母屋ノ横ノ 小サナアパートノ部屋ニイテ
東西南北ニ騒ギガアレバ 「ソウイウコトモアルカモネ」
ト言イ妙ナ醒メカタヲシ
花粉ノ時ハ ナミダヲナガシ
休ミノ時ハ トロトロアルキ
疲レテ足ガ棒トヨバレ 肩凝リモトレズ
ソウイウモノニ ワタシハナリタイワケデハナイ
私は龍という名前ではないけれど、あの金でなにが買えたか。

500mlの缶が300円として、ビールだけで900円。その他合わせて1200円くらいか。それを一ヵ月。休みの日には量が増えるので、だいたい40000円くらいか。40000円で何が買えたか?おそらく、何も買わずに預金残高が増えただけであろう。

給料明細を貰ってはじめて、その日が給料日だったことを知る私は、経済的にちゃらんぽらんな生活をしている。

ある意味、私は、ライフホリック(造語)である。
ものごころついてこちら、ぼくは、ぼくであることを止めたことがない。

---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------
当時の本 『<じぶん>を愛するということ 私探しと自己愛』香山リカ(講談社現代新書, 660円税別)「部屋がすごい人たち」って俺か?
当時の世 寒くなってきました。
当時の私 いや、まじで、酒控えんと、身体に悪いよ。

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