[*]I want to...

Date: Wed, 3 Nov 1999

私の知ってる限り、日本人の一部の人は、英語を口にする時、つい、妙なところで、弱い「イ」のような音、発音記号で表すところの【 j 】を入れようとする。
それでは、机の上にあるはずのパソコンは「ディスクトップ」になってしまって、お皿の上のアラカルトである。
何かを要求するときにも、つい、「アイ ウォンチュー」と
「君、なにを告ってんの?」という状況になってしまう。
気をつけねばなるまい。

なお、以下のお話は実話に基づいていますが、登場する人名、社名は架空のものです。

〜〜〜〜

3日は午前中だけでも出社して、雑務を片付けつつ、台湾とやりとりなどと思ってた。
向こうに出張してる先輩の鈴木さんが3日のお昼までは現地で打ち合わせしてるし、昨夜、向こうのスタッフに投げたメールの返事来てるかもしれないし、たぶん、台湾のカレンダーは平日だし。

前日に、課長から 「鈴木君つかまえてさぁ、その辺、話といてくんないかなぁ」という密命を受けた(いや、別に秘密ではないが)というのもある。こないだも、なにやら地震があったようだが、台北の方は被害なさそうだから大丈夫なんだろう。

というわけで、10時過ぎ、現地時間の9時だろうってことで、はじめての国際電話をこちらから掛ける決意をする私であった。

Catalogue社の代表番号に電話をかけて、なにやら中国語のガイダンスのテープが流れている間に、PBXボタンを押したあと、内線番号をプッシュする。

とりあえず、日本語ができるウーさんの内線に掛けてみる。が、しかし、なにやら中国語の留守電メッセージが流れている。不在のようだ。あう。

そう言えば、と思い出して、台湾の事務所に行ってる先輩の佐藤さんに電話する。「佐藤はCatalogue社の方に打ち合わせにいっております」と言われる。あうあう。

はて、どうしよう。 ぼくが相手のExtensionを知っているのは、最近、部品の図面の件でメールをやりとりしているリーさんと、あとは、リーダーだかマネージャーだか、エラい人らしいチェンさんだ。

リーさんに電話したら、電話口で図面に関する質問をされちゃうかもしれない。
でも、チェンさんに電話するのは、相手先の部長さんの席にいきなり電話して、「うちの鈴木お願いできます?」とおつかいをお願いするようで、失礼な気もする。
ま、それくらいならいいか。

結局、チェンさんに電話することにした。
前にもらったメールの頭に、Dear MURAKAMI-sanって書いてあったし。
# それは社交辞令だっちゅうの。

プルルルルル。カチャ。
「ニィハオ」
  あ、つながっちゃった。
「ヘロー」
「Hello!」
「ディスイズ むらかみ オブ モノログ リミテッド ああ、イズ ディス ミスタ チェン?」
「Yes. ・・・・・・・」
  なんか言ってる。あいさつだろうか。わからん。ええ、「お世話様です」って英語でも言うんだっけ?Thank you for your calling.ってのは掛かってきた時か。 ま、いいや。
「ああ、イクスキューズ ミ。 アイ ウォントゥー スピーク トゥー スズキサン オブ モノログ」
  昔習った授業によると、I'd like to とか、May I とか使うのがいいんだよな。たしか。
「OK. I will connect you. Hold on please. wait a moment.」(のようなことを言っているようだ)
  待つこと十数秒ほど(体感、3分くらい)
「Hello. Sorry. He's not here yet.」
「ンー アイ シ。ああ、ソ、プリーズ テル ヒム トゥ コール ミー バック?」
  あちゃ半疑問形になっちゃった。あう、俺、半疑問?嫌いなんだよな。
  昔習った記憶によれば、Could you だか、Would you mind だか使うのが良いのだな。たしか。
  英語のン〜フだか、ア〜ハだかの合いの手も苦手だな。
「OK. I will give him your message. May I ask your name and phone number?」 (のようなことを言ってるらしい)
「マイ ネーム?」
「Yes」
「マイ ネーム イズ むらかみ」
「モアカミ?」
「ムラカミ。 アイム ムラカミ オブ モノログ」
「What is your phone number?」
「ヒー ノウズ」
「OK. He knows.」
「サンキュー」
ガチャ(切る音)。

あう、なんか俺、無礼者。と反省しきり。

その後、午前中のうちに4度、 帰国を控えた鈴木さんとは電話のやり取りをした。 台湾までの地理的な距離よりも、時差と、言葉の距離を感じた半日であった。

---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------
当時の本 『心にとどく英語』マーク・ピーターセン(岩波新書、660円+税)たしかに、ぼくもget into とgo intoのニュアンスの違いが解からんような気がする。will と be going to はなんとなく。
当時の世 文化の日
当時の私 英語の世界だと、偉そうに仕事する幼稚園児。

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