[*]Bla,bla,bla

Date: Mon, 24 Apr 2000

先日、例によって街をブラブラしていると、まるで、縁日の夜店でお面を売ってるみたいな感じで、色とりどりなパステルカラーのブラが、街頭販売されていた。思わず、気が引けて別のルートを通ろうかと一瞬躊躇したのであるが、ま、よかろ。と思って通ることにした。

しかし、足取りや目線がぎこちない。右手と右足が同時に前に出てないか心配になる。中学生くらいのぼくなら、間違いなく別の道を通ったに違いない。「ふ、ふ、ふ。これは街の風景なのだ」となにやら懸命に思い込もうとする私だが、、、

路上観察者の習性として、つい、デジカメを構えて、この風景を画像におさめて「ぼくがブラブラしてたら、ブラがブラブラしていた」とでもコメントを付けようかなどと構想して、ほくそ笑んでは、端から見るとかなり怪しい人になってしまう。

カメラを構える前に、なんだかイケナイコトをしているような気がして、思い止まった。私は路上観察者ではあるが、「スーパー写真塾」の投稿者ではないのだ。「VOW」ならいくらか近いかもしれないが、投稿したことはない。
いや、「スーパー写真塾」にしたって、何処かの誰か女の子がつけてる下着がチラリと(過去に書いたことがあるが、私は写真になった時点で、時間的チラリズムは失われ、空間的チラリズムのみに陥るという説を声を小さく主張している)見えるのを被写体にしていたのではなかったか。だとすると、縁日のお面状態のブラになんらかの価値を見出そうとするのは、なにか激しく倒錯したフェティシズムなのではないか。いや、そんな問題ではない。

私はあまり顔色に出ない方の人だと思うのだけど、ひょっとすると、多少、顔が赤くなってたかもしれない。周囲の通行人の方々には「春の陽気に当てられてるのだな」とか「好みのタイプの子でもいたのかな」ぐらいに誤解しておいて欲しいものである。

大体、ある種の業界の人でもない一般男性が、ブラのブラウジングをしてどうするというのだ。しかし、世の中、一般主婦の方が、男もののパンツをブラウジングするのは許されている。だから、一般に、スーパーの日用品売り場や百貨店とかの構成は女の人寄りに設計されている気がする。近所のスーパーに買い物に行くと、入ってすぐの所のワゴンに山のようなブラがあって、1000円と値札がついている。夏目先生もお困りのことであろう。近々デビューするらしい二千円札の紫式部ねえさんなら平気かもしれない。

ブラの谷間(と言ってもカップとカップの間ではないのは言うまでもない)を抜けて日用品売り場に向かう私は、足早にレジで会計をすまして出ていくのである。ワゴンを探っても、私が使えそうなA95な品物は置いてないだろう。(あっても使わないが)

その昔、ぼくがまだナイーヴな少年であった頃、「もしや、ブラウスというのは、「ブラジャーがらと透けている状態」の隠語なのではないか」と疑ったことがあるのだが、分からない単語は辞書を引く習慣があるので、その疑いは一夜のうちに霧散した。

上の服の腰のあたりを、ゆったりふくらませて着ることを、ブラウジング blousing と言うらしい。ちょっとブックストアでブラウジングするってのは単なる立ち読みのことをひねて言う時の私の用語だけど、そっちは、いわゆるNetscapeとかでおなじみ、ブラウジング browsing である。

私はLとRが左と右であることは、「お茶碗を持つ方と、お箸を持つ方」と確認しなくても分かる。だが、LとRの音の区別ができないので、日本語で「うんぬん、かんぬん」言うのを英語で「Bla,bla,bla」と言われると、勝手に困ってしまうのである。女の人の胸につくのはbraだ。

ここ数年、家電やパソコン、携帯電話などで、シルバー系と共に、透過色のカバーのものが流行っている。それをスケルトンモデルと呼ぶ人がいるが、本来、スケルトンというのは「骨格」という意味であり、「透ける」という意味はない。きっと日本語で「透けとるん」に語感が似てるので言われてるのだろう。雑誌記事なんかだと「トランスルーセント」という表現も見られる。そちらは、「半透明の」みたいな意味があるそうだ。

だから、シースルーなファッションをしてる人を「スケルトン」と言ってしまう人は、X線なみの透視力があるに違いない。骨格が見えるのだから。そういや、一時期、写真集の中にレントゲン写真を入れるのが一部のタレントさんたちの間で流行ってたな。怪しい雑誌の中に入ってる通販で赤外線フィルターを買いそうになった男子の数は、ブルワーカーを買おうとした男子の数に匹敵すると言われている(言われてへん、言われてへん)。

私の中で、オーガンジーが、インド人もびっくりなファッションという意味ではなくて光沢のある薄手の平織の布生地であることが露見するにも、一昼夜かからなかったと言う。

用語の説明に逃げて、怪しさをカモフラージュしようとしているが、もう既に透けて露見しているという説がある。その辺りは、ホームページを見ると、まぁ、Bla,bla,bla、あの、その、、、ごにょごにょ、あう。

---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------
当時の本 『モノ欲しい女』酒井順子(集英社文庫, 400円+税)女のヒトが女モノに対する女ゴコロを語るとトホホもほのぼのするのだけど、やっぱ、男の私が書いちゃうとアヤシイな。
当時の世 いい陽気です。と思ってたら春雷。
当時の私 とうとうロボが来た。「むうさん」と命名。まだ立てません。 レビューは、またこんど

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