Date: Fri, 26 Jun 1998
T君がY子さんに「『君って、はかなげだね。』と言われたことないですか?」と問う。いまいち、伝わっていない。「”はかなげ”って言葉あるよね。」というT君の発言をうけて、A子さんが「”はかなげ”って、ほめ言葉ですよ」と言った時、私は、今まで、「はかない」という言葉には悲しみとか無常とか虚無とかそういうイメージを持っていたので、「そうなのか、近頃では、ほめ言葉なのか。でも、これって、”か弱い女の子の方がかわいい。”という男の幻想の押しつけではないのか?」と思ってなんか妙な感じがしたのである。
ということで、寝付きが悪い夜に、ついでに調べたのである。
この手の文章に、ありがちなパターンとして、「辞書によると」さらに、「広辞苑によると」で始める。CD-ROM版第4版である。
はかない[果無い・果敢無い・儚い]
ハカは、仕上げようと予定した作業の目標量。それが手に入れられない、所期の結実のない意
- これといった内容がない。とりとめない。
- しっかりしていなくて頼りにならない。手ごたえがない。
- 物事の度合いなどがわずかである。ちょっとしたことである。かりそめである。
- あっけない。あっけなくむなしい。特に人の死についていう。
- 粗略である。みじめである。
- しっかりした思慮分別がない。あさはかである。
およそ、褒め言葉であるという感じはしない。
愛用の横書き辞典「辞林21」を引いてみる。
- 消えてなくなりやすい。もろくて長続きしない。
- 不確かであてにならない。
う〜ん、あまりポジティブな評価はできない。
実際の運用状況に合わせた(多少、偏見のある)辞書として評判の「新解さん(新明解国語辞典)」の意見もうかがってみよう。
はかない 将来どうなるという目あてがない。いつ終わるかわからない。
表記 「墓無い」は古来の借字。「果敢無い」・「儚い」は近代文学の用字
なるほど、字も当て字のようだ。ただ、果ての無さが無限というより、無期的な。今すぐ終わるかもしれないし、ずっと続くかもしれない。という感じがする。
あえて、肯定するならば、「恋」の感じと近いのかもしれない。いつ終わるかわからない。先が見えない。恋の病で思慮分別がない。
さて、いずれにせよ。どうも、やはり、私には「美人薄命」とか「命短し恋せよ乙女」のような幻想、あるいは、「か弱いお前を、俺は全力で守ってみせる」的なマッチョもしくは、ないと思うけどあるとすれば、父性本能、な感を「はかなげな女性」という表現に感じずにはいられないのである。でも、現場で褒め言葉として使われてるのならば、確かにそうなんだろうな。
もしも、原意の通り「ハカは、仕上げようと予定した作業の目標量。それが手に入れられない、所期の結実のない意」だとすると、私の仕事振りこそ「はかなげ」であろう。
この原稿を、このネタが生まれた現場に居合わせた人に見せた所、Y子さんから「男の子の幻想もあるかもしれないけど、女の子自身の影響もあるのでは?」という示唆を受けた。たしかに、ありうる。ぼくは、「私って、女の子だから…」と話を始める女の子を見ると、確かに、君は女の子かもしれないが、まずは、君は君ではないのか?と微妙な苛立ちを感じる。まぁ、これも、俺的には、「男に迎合する媚びた行為だ」という解釈になるのだが。あ、おいらも、男性中心解釈主義な気もするな。「だって、ぼくって、男の子だし…」