[*]Issue of hair

Date: Mon, 21 Apr 1997

さて、私、ここ数カ月、髪を切りに行ってません。そもそもの始まりは、ただ、めんどっちいというのと、伸ばしてみるのもおもしろいかも。と思った。って程度のもんです。

散髪屋さんで、イスに座ってされるがままになってるのも、それはそれで、ある種の心地よさがあります。ばさっと切ったら、これまたある種、心が軽くなるような時もあります。昔から、髪には妖気や呪いが宿るなどと言われてます。鬼太郎の妖怪レーダーも髪の毛です。何かいかがわしいイメージがあるから、部屋の床に抜け毛が転がってたりしたら、仇のようにテープでくっつけて取る人もいるのかなぁと思います。

それにしても、もう半年とは言わないまでも数カ月経つのに、まだ肩に届きません。束ねるには短く、無理にゴムで止めると筆先かブタの尻尾か? という感じです。でも下ろしてたら、クセ毛がブワっと広がってしまいます。おかげさまで、毎朝、その日のコンディションによって、スーパーサイヤ人かドン・キングあるいはサリーちゃんのパパだったり、サイババかドリフの爆弾コントのようです。ダメだこりゃ。

やはり、男の髪は伸びにくのかなぁと思ったりします。概して髪の毛は女性ホルモンの支配下にあるので、女の人の方が伸びやすいと言われています。側頭部は男性ホルモンの支配下にもあるので、高齢の方でも横は結構残ってることが多いらしいです。ある種の育毛剤には女性ホルモンが配合されてたりして、使うと体のバランスを崩してしまう人もいるっていう話です。

私の場合は毛量は比較的多い方らしいので、育毛剤のお世話にはならないのですが、私思うに、抜ける毛というのは毛の寿命を終えて、つまり老いて抜けて行くのだから、幼年期の毛を育てるというのならまだしも、いたずらに育毛剤を使用するのは、ロングレンジで見れば老化を促進してることにはなりはすまいか?

私が散髪屋に行くのが億劫になる理由の一つに、small talkというか世間話があります。散髪屋さんは何故かある種のタクシードライバーと同じく、客が来たら世間話をしなけりゃなんない。と思っている人がいるようです。ネタを用意したり、人のネタを聞いたり、他愛ない議論をするのは好きですが、あまり興味のない話題の世間話は拷問に近いものがあるように思います。

そんな話の中で、私の知ってる散髪屋のにいさんが「はげるかどうかはねぇ。母方の男兄弟を見るといいんだよ。」などと言ってましたが、私の母の兄弟を見ると、見事に禿げている人と、全く禿げてない人がいます。禿げている方の伯父さんは周りに大変気を使う人だったらしいから、気のものかもしれません。私自身は禿げてきたら剃っちゃって、ゲージツ家の篠原さんか松山千春のラインを狙おうかと思ってます。

しかし、これくらい伸びたら、散髪屋じゃなくて美容室というとこにデビューしないといかんのだろうかと、これまたわけのわからん悩みが増えます。

「渋谷のにいちゃんじゃないんだから」と言われた私の髪ですが、私はブリーチかけてないし、あまりストレートな髪じゃないし、カチューシャしてないし、かきあげた髪の下の耳にはピアスしてないし、全然違うと思ってます。こないだ試みに渋谷センター街というところに行ってみましたが、なんだか空気が違ってて淀んだ感じで怖かったので、すぐに逃げてきました。

こないだは、「髪のびてるよ」と毎度のように言われたので、「生きてるからねぇ。髪も伸びるよねぇ。」と言い返したら「訳わかんねぇ」と言われてしまいました。どうして、生きているから髪が伸びるというすごく訳の分かることが、その人にとって訳わかんねぇのか、それこそ私には訳わかんねぇのですけどね。

小学校の時はスポーツ刈りだったし、中学校は規則で丸刈りだった。高校や大学の時もあまり伸ばさなかったので、初めての体験だったりするのですが、耳や首にかかると、「う〜ん。おれの耳はこの辺りか、おお、首はつながってるなぁ」と触覚による理解ができたりして、新たな発見も多いですな。

それで? 何が言いたいの? と言われると困るのですが、まぁ体に残された自然であるところの髪を伸ばして状況を観察してみようという。自然保護と自然科学と社会科学を重ねたプロジェクトなのですよ。なんちて。

[つづく]

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