[*]Convenience store

Date: Mon, 04 Aug 1997

おなかが減ったけれども、特別しっかりと食べようというほどでもない場合、しばしば、インスタント食品のお世話になる。

コンビニでカップ麺を単品で購入すると、私の嫌いな、
「おはし、おつけしますか?」を言われてしまう。
「おはし、おつけいたしましょうか?」では過剰な気がするし、
「はし、つけますか?」では、ちょっとぶっきらぼうな感じがする。
「おはし、つけますか?」あたりが良いんじゃなかろうか。とも思うけど、
何にせよ、「おつけしますか」はいかにも、取って付けたような気がしてあまり好きではない。
まぁ、コンビニなんてどのみち、さほどフォーマルな場所じゃなし、「よそいき」のちょっとこぎれいなTシャツに着替えて出掛けるだけの場所である。敬語の使い方に悩む場所でもない気もする。

しばしばお世話になるインスタント食品に、インスタントの焼きソバがある。あの、お湯を入れて何分か経ってお湯を捨てて、ソースとふりかけをかけて完成するあれである。お湯を捨てずにスープにしてしまう製品もある。

しかし、件の焼きソバ。どう考えても、その調理方法を見るかぎり、「焼きソバ」などではなく「ゆでソバ」あるいは「蒸しソバ」である。なぜ、あれが焼きソバなのか? 焼いた時の香ばしさなどないではないか? などと悩むのであるが、量が少ないので結論が出る前に食べ終わってしまう。食べ終わってしまうと、空きっ腹もとりあえず落ち着いたものだから、「ま、いいか」ということになる。

通勤時の最寄り駅から寮に帰るまでの道程に、セブンイレブンが一軒ある。昔、私はセブンイレブンは朝7時から夜11時しか営業してないと思っていたのだが、どうやら24時間開いているらしい。

私はそこで、しばしば、
「大盛りチャーハン弁当+マルチャンミニワンタン+雪印毎日骨太300ml」
のセットを買う。あんまりこればかり買うものだから、ひょっとするとコンビニの店員さんに
「いつも大盛りチャーハンセットを買って行く人」として覚えられてしまっている疑いのある私である。

お約束なので、店員さんは言う。「お弁当の方、温めますか?」冬場なら「いいえ、牛乳の方を温めてホットミルクにして下さい。」と言うところだが、暑い夏の夜でもあり、ボケるのは我慢する。

時折、フェイクで、温めるはずのない割子ソバや、寿司を買うことがある。不完全に調整されたレジマシンと化したバイト君やバイトさんだと、自動的に「温めますか」と聞いてくる。一度だけお約束風アドリブのきく店員さんで、「あちゃ、失礼、寿司をあっためたら大変ですよね〜」と言われたことがある。

お約束風アドリブとは、私の定義で、ネタそのものは決して即興のものではなく、シチュエーションを考慮すると「こうでも言っとかないと、しょうがないっしょ」というようなセリフを速攻で出すような場合を言う。ネタそのものは用意済だから、処理速度の速いマニュアル君にも実行可能である。

嘉門達夫の『TK替え唄メドレー2』ではないけれど、チャーハンも焼きソバも唐揚げもシューマイもコロッケもコーン入りポテトサラダも紅生姜も温まって仕方ない。まぁ、コーン入りポテトサラダは温まった方がいい感じ。だが、またしても、ここでチャーハンは炒飯のはずが蒸飯になるのであった。でも、頭の中は「チャーハンは中華なのに炒飯(イタメシ)とはこれいかに」とつまらないボケの方が優勢なので、電子レンジの罪はさほど強く糾弾されてはいない。

「お弁当の方温めますか?」はい。「お会計の方、先によろしいでしょうか?」諭吉君を一人差し出す私。「お先、大きい方、9千円お返しになります。」「こまかい方、288円お返しになります。」「ありがとうございました。お弁当の方、少々お待ちください。」

「まったく、〜方、〜方、ホウホウと、あんたはフクロウかい?」と思うのであるが、私の方も「○○の方は、あいにく本日、××の方に出張しておりまして、上司の方と相談いたしまして、折り返しお電話の方いたします。」なんていう昼行灯のフクロウになってしまうことがあるのでツッコミはしない。

時折、商品のバーコードがうまく読み取れなくて、レジが大渋滞になることがある。店員さんがバーコードがきれいな商品と交換してくれたり、商品棚に値段を見に行ったり、手入力でコードを打ってたりする。売れなくなれば消えていく無数の取扱商品の値段を全て覚えてろとは言わないが、バーコードリーダーの不調で物も売ってもらえないとは…私は現代情報化社会の死角に恐怖するのである。

商品についたバーコードと不調なバーコードリーダーに「ふっ」と息を吹きかける店員さん。「あんた、魔法使いかい。アナクロだなぁ」と思ってると、沈黙していたバーコードリーダーが息をふきかえして

「ピッ」

おそらく、バーコードリーダーは思ったのである。
やばい!! ここで復活しないと、次は「斜め45度で空手チョップ」だ!! 起きなきゃ!!

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当時の本 『あと千回の晩飯』山田風太郎(朝日新聞社, 1700円)風老人の死生観にはいくらか共感するところがあるのだが、向こうは70代、こっちは27歳。追いつくにはあと1万8千回くらい晩飯を食べなくてはならない。
当時の世 地球温暖化は進む。いや、夏は暑いもんだ。
当時の私 大盛りチャーハン弁当のヘビーユーザーである。

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