How much is the BOMB ?Date: Wed, 14 Aug 2002
どうやら私はボンボンらしいのである(念のために記すが、別に毛糸の玉飾りではないし、少年コミック誌でもない。ましてやウイスキーとか入ってるキャンディーでもない)。確かに生活に困ったことはないし、何不自由なく育った気がしないでもない。(たまに、不自由な気がした時は、「よそはよそ。うちはうち。」と、しっかり躾けられたのである。)実家の店は創業35年くらい(父が創業者である。もっとも単なる販売店なのだから、果して創業か?というと謎である。)だから老舗とは言えないし、大店、ならぬ、小店の若旦那である。 若旦那は小さい頃から「継がんでいいから」と言われて育ったので、たまに手伝うことはあっても、経営にはちっともタッチしていない。なにせ、ボンボンなので、コスト感覚が怪しい。というか、自分の財布にいくら入っているかも把握していない。コンビニに買い物に行って、どうやら財布の中身が足らないということで、「んん、これ、買うのやめとく」と棚に商品を戻すくらいにわがままである。 うまく買うことが出来たとしても、どちらかいうと、「買ったものが面白かったか?」に目が行ってしまって、「安く買えたか?」とか「役に立ったか?」という視点をあまり持ってない。費用対効果、いわゆるコストパフォーマンスよりも、疲労対効果の方を重視する傾向がある。というか、すぐに「つかれた」「しんどい」という。あんまり言うので、「狼が来たぞ」という少年並に信用がない。 そんなボンの実家に、謎の電話がかかって来たのである。 「お母様は、いらっしゃいますか?」 ちなみに電話に出たのは、お父様である。お父様は、朝の配達を終わって、ビールを飲んで、ステテコに上半身裸で、ちょっと早いお昼寝タイムだったのに電話で起こされて、ご機嫌斜めである。「なんか、お母様とか、ゆうとるぞ。」 お母様は夏の暑さに耐えかねて、スカートの裾をたくし上げて、パタパタうちわで空気を入れていらっしゃる。「はい、もしもし」と商売用の1オクターブ高い声で電話に出ると、なにやら、ご子息のご縁組のご紹介の会からのお報せであるらしいのである。「ご子息のような方なら、すぐに、お相手が見つかりますよ」とのことであった。ご子息は果たして、どのような人なのか、ご本人としても、なにを言われているのか、さっぱり分からんのである。 その後、送られてきた資料にあった資格基準とやらを見ると、
申し訳ないが、ボンはすでに、クラクラと目眩がして視界がブラックアウトしている。近頃、姿勢を変えると目眩がすることが多い。脳卒中も近いに違いない。脳卒中という中学校はどこにもないが、そこを卒業すると、脳卒中卒。なんか、死んでしまいそうである。 クラクラしながら、入会に必要な書類など見ると、
とある。なんだかなぁ。目眩と共に動悸もだんだんひどくなる。心筋梗塞も近い。もう健康診断で脱落である。ボンボンの中身はビールである。
金銭感覚のないボンはなんだかクラクラがだんだんひどくなって、「愛や幸せ行きの列車の乗車券は55万円なんだろうか。途中下車はありなんだろうか。車内販売がめっちゃ高かったりするのじゃなかろうか。」などと悩んだフリをする。 「果たして本当に悩んでるか?俺」 なのだから贅沢である。 ある成功者にその秘密を尋ねると、「見切り発車したからでしょうね」と答えたのだそうだ。勢いと感動を覚えたとパンフにはあるが、失敗した人に聞いてみれば、たぶん、多くの人が、「見切り発車だったからでしょうか?」と言うに違いない。無論、世界に60億の人がいて、ま、同性が好みの方もいるかもしれないが、異性が30億人いるとして、一通り吟味しようとしてたら、相手は結婚してたり、自分はどんどん歳を取ったりするので、どこかで見切るのに違いないのだろうけれど。見切るってのは看破するってことだろうから、見切り発車って違うな。なんて思いつつ、かといってさほど強い欲求もなく。 ということで、ご両親ご同伴で見学に来てはいかがかなどというお誘いであったのだが、少なくとも、あいにく、我が家には、お父様もお母様もご子息様も、実はいないらしいので、丁重に、いや、無作法なものでぞんざいにお断りするのであった。
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