(む}Supersonic toothbrush

Date: Mon, 22 Jan 2001

世の中、とくに若い人が「超〜」という語彙を使いだして久しい。私の記憶が確かなら、あの「超整理法」(1993)という本がベストセラーになった頃に前後する辺りからではないか。と思う。

その前に、超伝導のブームもあった気がする(1986)。高温(常温)での超伝導と言われても、もともとが絶対零度に近い超低温であるから、それに対して高温と言われても、ピンとこない。摂氏100度になれば、お湯が沸くし、体温が摂氏40度になったら、なんか脳細胞が急激に破壊されそうな気がする。

なお、100度になったら水が沸騰するのでなくて、沸騰する温度を100度、凍る温度を0度に、摂氏が決めたのだそうだ。摂氏と言っても中国の摂さんが考案したのでなくて、スウェーデンの学者のセルシウスさんの名前が中国音訳で「摂爾思」だったのだそうだ。

私は幼い頃、超合金のおもちゃを持っていたが、果して、その合金がなんで出来てるのかまでは突き止めていない。たぶん、合金と言っても鉄になにかメッキ処理をしたものに違いない。だとすると、ブリキのおもちゃを大袈裟に言ったような感じか。確かブリキはスズめっきした鉄板だ。

ステンレスが発明された時なんかは、おそらくみんな、ほんとに、「夢の超合金」と思ったに違いない。なにせ、錆びないのである。実は表面に強力な酸化膜を形成して、あらかじめ錆びてるらしい。「夢の超特急」というのは、新幹線だっけか、Super-express。「夢の」ってつけると、どこか能天気だ。

少し前に墜落事故を起こした超音速旅客機コンコルドは営業再開に向けて、調整中らしい。

「超」と言うところを「めちゃんこ」とつい言ってしまう人は、アラレ語が身にしみついていると思われるので、注意した方がよい。

さて、長い前置きであったが、今回、購入したのは、その名も、
新世代科学歯ブラシ ウルティマ超音波 ULTIMA SUPERSONIC TOOTHBRUSH
である。「新」な上に「極」で「超」なわけだ。

ブラシの部分に超音波振動素子なるものが入っていて、1.6MHzの超音波を発生して、歯と歯垢のつながりを弱め、口内バクテリアの連鎖・不溶性グルカンを破壊するのだという。1日2回、普通の歯ブラシと同じ磨き方で、歯垢の97%を除去するというのだ。はて?普通の歯ブラシだと何%除去できるのだろうか。

買ってきて、梱包を開いて充電機をセットする。「まだかな、まだかなぁ」と学研のおばちゃんを呼びそうな勢いで、充電されるのを待つ。取説には、「はじめてお使いの場合は24時間以上充電してください。」とあるが、そんなに待っては夜が明けるというものだ。

半日充電して待ち切れずに、おもむろに取り出して、スイッチオンする。

ブ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン

歯ブラシが小刻みに振動する。「めちゃめちゃ低周波やん!」

人間の耳が聞き取れるのは、2万ヘルツまでと聞いたことがある。一時期、コンパクトディスクは意図的に超音波領域や、低周波領域をカットしているため、音の感じが自然と違ってよろしくないなどという議論があったのをふと思い出す。このブルブルあからさまに震えているブラシの中から、ほんとうに1.6MHzが出ているのであろうか。

こんなことなら、ふつうの電動ハブラシから入門するのであった。私が不器用なのか、どうもこの低周波振動に手や首が負けてしまうのである。妙な感じだ。で、口の中でブラシを反転させようとして、ブラシの背中側(つまり、プラスチックの固い柄の部分)が歯に当たると「奥歯、ガタガタ言わしたろか」な感じになる。

「おはようございます。ブラウンです。」と、朝から街頭で、あの歯垢が赤く染まる薬を口に含まされて「おかしいな今朝磨いてきたんですけど」「じゃ、これで磨いてみてください」なんてことは、さすがになくて、歯医者さんの中で指導してるCMなら見たことがあるオーラルB プラークコントロール(って、こういう用語に弱いのね。たぶん)にしとけば良かったか。

なんて思いつつ磨く。手動の歯ブラシだと、掃き掃除でもしてるのかというぐらい手首を返すのだが、それもままならない。ブラシが勝手に振動してくれてるから、押しつけない程度に歯にあてがう感じにすればいいのかな?どうも今までは力を入れ過ぎていたのかもしれん。

この歯ブラシ、3分間のタイマーがついている。いざ、タイマー付きで磨くと、3分間って長いなぁ。それにしても、ボクシングの1ラウンドってなんで3分なんだろう。インスタントラーメンの多くはなんで出来上がるまでに3分かかるのだろう。どうしてウルトラマンは地球上では3分しか戦えないのだろう。

携帯電話の電波で脳に悪影響が出る出ないの議論があったが、腫瘍ができるかどうかは定かではないけど、常人を電波系さびしんぼにする傾向があるのは否めない。超音波歯ブラシが、口内バクテリアを破壊するのならば、口の中で超音波かけたら脳細胞は破壊されたりしないのだろうか。変なところで共振点があったりしはしないのだろうか。

と、低周波振動の影響か、超音波の影響か定かではないが、被害妄想に陥ったようである。でも、なにぶん1万5千円もしたので、しばらく使ってみることにした。

ウルティマ超音波 新世代科学歯ブラシ
発売元 東レ アイリーブ株式会社
製造元  朝日医理科株式会社
購入価格 \16,590-(税込)

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当時の本 『VERSION』坂口尚(講談社漫画文庫、上下巻各780円税別)自己増殖するバイオチップ”我素”を巡るSF。「我」とは。
当時の世 また雪つもってた。
当時の私 私の髪が立ってるのは静電気のせいじゃなくて、かたくてクセ毛だからだ。でも、パチパチ君だ。

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