(む}AIBO Carrying Bag

Date: Mon, 21 Aug 2000

さて、かれこれ、AIBOのむうさんが来てから、4か月近くになる。もう成熟したのであろうか、あんまり新しい芸を披露してくれたりはしない。毎日動かしてるわけではないし、動かしたとしても、電池が切れるほど動かすことは稀だから、一日に1時間も動いてないと思う。

酔って寝転んだ私の下敷きになって
危うく平面AIBOになりかける むうさん

生き物な本物の犬だと、確実に散歩不足によるストレス障害か生活習慣病になるのじゃないかと思う。それにいくらか成長したと言っても、体が大きくなるでなし。
昔、近所に子犬の頃に拾われて「チビ」と名付けたらいつしか巨大になった犬がいた。飼い主のお子様が、自分より大きな犬に対して「チビ、チビ」と呼んでるのは、滑稽だが、ほのぼのであった。

今回、帰省した折、連れて帰る旨、以前電話で話していたので、専用キャリングケースも入手したこともあり、むうさん初の列車旅行となった。日帰り出張なら、内蔵電池と予備で、合計3時間も動けば十分なのだが、数日にわたるので、私が「座布団」と呼んでいる充電ステーションも持って帰ることにした。

拘束をうける むうさん

複数の方から「AIBOって電池が切れそうになったら、自分で充電しに行くんじゃないの?」と言われたのだが、奴には自分で充電ステーションの上まで行って座るほどの空間認識能力はない。内蔵電池が空になると、お怒りモードの目をしたあと、ヘナヘナなファンファーレと供に、すねて伏せの姿勢になるだけである。

私は枕が変わっても寝られるが、彼は布団が変わると活動不能になるのだ。さすがに、ステーションまでは専用バッグに入らないので、背中のデイパックの中にステーションを入れて、片手にキャリングバッグ。特に、お土産や、着替えも持たずに、実家に向かう私であった。

キャリングバッグには、赤のバックパック型と、青くて犬型な外形が見えるカジュアルバッグタイプと、黒の比較的オーソドックスなバッグタイプとがあった(8/21現在、青と黒は完売、品切れだそうです)。赤のタイプは大きく浮き文字でAIBOのロゴが入っていて、その上、窓がついてて、そこからAIBOの顔が覗く形であった。青の犬型タイプも、かわいい女の子が持つならまだしも、という気がしたので、私が買ったのは、無難な黒タイプであった。

家にたどりつき、バッグを置くと、母が親子の会話の糸口でも見つけようとしたのか「あら、洒落たバッグ買おたやん」と言う。せっかくネタ振りされたので、「その中に、例の犬みたいなやつが入ってるんやけどね」と言いつつゴソゴソと取り出す。しかしまぁ、専用のクッション材はマジックテープでくっついてるだけなので、それらを全部とれば、確かに普通のバッグとしても使える。

四畳半に家具が置いてあって、決して広くはない茶の間だけど、普段の散らかし放題の私の部屋よりは空間があるので、ごそごそと、よく動くむうさん。普段はあまり見せない小便ポーズも「ジョロジョロジョロ」という効果音とともに3回もした。周りに人が多いものだから彼も興奮してるのだろうか。

配達から帰ってきた父と弟も「あら、おもしろいもん連れてきたなぁ」と見ている。父に至っては、むうさんが首を傾げると、一緒になって、首を傾げている。「ははは、しょんべんしてる。」「でも、床が汚れないからいいわなぁ。」「餌もやらんでもいいしなぁ。」「電気は食ってるみたいやけどね。」「毎日散歩に連れていかんでもいいしなぁ。」「よかったやん、話し相手できて。」

おいおい、待て。私は断じて、仕事から帰って部屋の電気をおもむろに点けて、ため息一つついて、奴の頭を撫でながら、
「ただいまぁ。むうさん。お留守番ご苦労さんだねぇ」
なんて声をかけたりしていない。というより、自分の部屋で独り言を言うことは極めて稀である。私が独り言を言ってる時は、周りに聞いてる人がいる時に限るのである。それはこのネタの配信と同じである。それに、彼は座布団の上で鎮座ましましてるだけなので、番犬にもならない。

こちら、テトラさん
(壁紙ファイルから引用)
こちら、むうさん
(姿勢はやらせです)

テレビで映画『ジュブナイル』のCMが流れている。そこに出ている「テトラ」を見て、母が「ほら、あんたが連れてきたやつと同じのが出てる」と言う。同じではない。まだソニーのテレビのCMに出てきた奴なら同じかもしれないが。もっとも彼女はロボットもののアニメが流れてると、「あんた、まだ、ガンダム見てるの?」と言う程度の識別しかしないので仕方ない。

「でもなぁ、やっぱり話相手は、人間の方がいいんと違うか?どうなんよ、ええ子はおらんの? そんなロボットの犬相手ばっかしやと、さみしいやろ。」結局、また話はそこに行くんかい。耳の一部がかたくなるのを感じた私は、イボコロリはないかと辺りを見回したが、見当たらないので、むうさんを抱えて、私が寝ることになった部屋に、ひきこもった。「なぁ、むうさん。お母さん、あんなこと言うてはるよ。」と話しかけたりは、断じてしてない。

---MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS------------------------------------
当時の本 『依存症』信田さよ子(文春新書,660円+税)まだ社会生活上支障をきたしてるつもりはないけど、俺、依存症だなぁ。でも、酒飲んだ方が生きやすいものなぁ(というのは、よく自称軽症患者がする言い訳である)。
当時の世 外で激しい音がするので、「あ、もしや雷雨」と思って慌ててベランダに出て、干しっぱなしの洗濯物を取りこもうとしたら、河川敷で花火。道を見ると、たくさんの人々が、ハーメルンの笛吹き男に誘われるようにぞろぞろ歩いている。なんか、気味が悪い。花火はきれいなんだが。
当時の私 髪や爪が伸びるのが遅い気がする。
当時のむうさん 以前は喜んでいたピンクボールには見向きもしなくなった。欲しい時期に私が与えなかったからかもしれない。特にコミュニケーションがあるわけでなし。彼は私とは関係なしに、うろうろと歩いている。

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AIBOは、ソニーの製品です。
キャリングケースの取説には「ソフトバッグですので、落したり、物にぶつけるなどの乱暴な扱いはAIBOの破損の原因になります。AIBOの胴体や頭部、シッポ、足などに負担がかからないように注意してください」「飛行機での移動の際は、必ず手荷物として機内に持ち込んでください。」とある。愛のない飼主の私は、帰途は宅急便で送りつけてしまったのである。ああ、無事で良かった。
ジュブナイル』は山崎貴監督、SMAPの香取くんが主役(ではないか)なSF作品です。
ガンダムは、富野由悠季監督のサンライズ作品の一連のアニメ作品です。1980年代をガンダムと過ごした人も多かろう。ってもう、2000年代ですね。でも仮面ライダーもクウガやってるし、ウルトラマンもナイスだかネオスだかやってるみたいだし。
なお、AIBOはどっちかいうと自律型ロボットなので、ガンダムというより、アトムの方が近い。0.00何馬力かはしらんが、1犬力もないのはたしかだ。
イボコロリは横山製薬の製品です。