[*]Cretaceous Park

Tue, 29 Jul 1997

携帯ツール好きの一環として、初代のザウルス(PI-3000)を持っている。デ−タを入力するのにフォーマットがたくさんあっていいなあと思っていた。買った当時は予想していたよりもなかなか実用的なペン入力であったが、どうしても、ぼくの書く「ろ」と「3」の認識を失敗することが多かったので、ありゃりゃ、と思ったことも多々。

初期のザウルスはメモリの量があまり大きくなかったので、アドレス帳のような用途ならまだしも、ぼくのようにネタ帳あるいは私的データベース的な使い方をしようと思ったら、容量が足らず拡張RAMカードを買い足して運用していた。それに、ぼくは手帳でスケジュール管理をしないといけないような多忙な人ではないし、アドレス帳を利用しなければならないほど、人付き合い豊富な人でもなかった。

小ネタというのは、すくなくともぼくの場合、脳漿の底の方から、ボコッと浮かび上がったあぶくが脳味噌のしわを通って上がってきて新皮質表面ででパンッと弾けるような感じがあるから、思いついたときに書き留めるか、あるいは、落ち着いて書き留められるポジションに着くまでのあいだ、ひたすら頭の中でリフレインを繰り返していなければならない。

その点では、その後の機種でいくらか改善も見られたが、電子手帳の初動の速度では、頭の表面でネタが弾けて消し飛ぶのに追いつかないのである。そういう事態になると、「さっき、なんか、おもしろいこと考えてたんやけどなぁ」と、まるで、出かかって止まったクシャミのような違和感があるのである。

そのため、ネタ帳は従来通り紙ベ−スのミニノートに戻った。電子ファイルのメリットである検索性は犠牲になったが、どのみち、重要な案件はあえて検索をかけなくても、いつ頃、どういうシチュエーションで思いついたか分かるし、小さいノート1冊を始めから最後まで繰る時間もないほど忙しいわけでもない。

最近の機種になるとメモリも増え、立ち上がりも速く、処理速度も改善され、多機能になったようだなぁとお店で見たり触ったりして感じるのだが、初代を買ったきり買い換えていない。

ぼくは、おそらく、平均的な人よりも文章を書く量が多いと思うが、その道具としては、ペン入力では思考の速度に追いつかないのである。文章を書くのなら、タッチタイプができるキーボードでも果して脳味噌のスピードについてこれるか怪しいのだけど、まだ、そちらの方が良い。

近頃はカラーパワーだと進化を続けるzaurusである。なにやら今度のはキーボードもくっつくらしい。すでに、独自の進化を遂げ、The Jurassic というより、白亜紀Cretaceous periodの隆盛を誇る恐竜。はたして、こいつにも絶滅の危機が来る時があるのだろうか。

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