Drumsticks ふくらはぎ

私は脚フェチではないが、膝周りに関しては、多少、素人よりはうるさい。

なぜかというと、私は大学で膝の靭帯の一つである膝蓋腱の力学的性質で卒論を書いたからであり、そのために、乳離れ間もない子ウサギから、発情して後ろ脚を踏みならしてやかましい大人ウサギまで、膝を切開して仕込みの手術を行って数週間飼育して、屠殺して膝蓋腱を摘出してそれの引張試験を行うというのを3年ほどやっていたからである。

ちょっと残酷そうであるが、その通りである。同じ研究室でも他の多くの人は成熟した個体でしか実験していなかったので、私などは「かわいそう」と非難だかひやかしだかの声を背に実験していたのである。と、そっち方面に行くと科学観とか生命倫理の重たいテーマに行ってしまうので、ここでは件の膝の話に戻すとしよう。

 俺時々僕ところにより私
俺時々僕ところにより私
http://muccitexi.com/1998/12/20/like-as-two-peas/
I, My, Me

で、膝蓋腱というのは「しつがいけん」と読む。論文提出の時にも事務員さんに「なんて読むの?」と聞かれたくらいだから、ふつうは馴染みのない言葉である。膝蓋腱というのは、トンカチでポコッと叩くと脛がヒョイッと前に出る例の脚気(かっけ)の検査の時に叩いている部分である。膝のお皿のことを膝蓋骨といい、それと脛の骨、脛骨(けいこつ)を繋いでいる腱である。お皿の上の方は太股の巨大な大腿四頭筋と繋がっている。

小さい頃、人体図鑑を見るのが好きだった。

 俺時々僕ところにより私
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http://muccitexi.com/1997/10/06/human-body-as-micro-cosmos/
I, My, Me

骨格の絵よりも筋肉の絵の方が怖くてドキドキした記憶がある。小学校の頃、塾の理科のテストで人体の問題があり、その膝のお皿に矢印がついていて名前を書けというものがあった。正解は「しつがいこつ」だったのだが、小さなぼくは、「なんで頭やないのに、「がいこつ」やねん。」と思ったものである。しかし、頭の「がいこつ」は「頭蓋骨(とうがいこつ)」、ひざの「がいこつ」は「膝蓋骨」どっちも蓋というか皿というか、そういえば、河童は頭の上に皿がある。全身の骨を指して「骸骨」ということがあるが、それとはちと違うようだ。

 俺時々僕ところにより私
俺時々僕ところにより私
http://muccitexi.com/1996/09/08/human-skull/
I, My, Me

膝関節は膝蓋腱の他に主に4つの靱帯により維持されている。まず内側側副靱帯、外側側副靱帯が両側から支えている。さらに関節内部に膝の抜けを防止するために、前十字靱帯と後十字靱帯がある。前後2本の靱帯がクロスしているから十字靱帯なのである。スポーツ選手などがよくやってしまって、人工靱帯や移植の時に話題になるのは前十字靱帯である。側面からの衝撃で損傷する場合は内側側副靱帯も同時にやってしまうことも多い。

腱の中で比較的、知名度が高いのはアキレス腱であろう。アキレスさんが最強の肉体になりたくて、神様にお願いして無敵の身体をつくる薬をつけてもらう予定だったのだが、神様が作業中、ずっと足首を持ってたので、マスキングされちゃって、そこに薬がつかなくて弱点となったという。なんだかギリシア版耳なしほーいち君(逆か? )である。

なんだか弱っちい風に言われているアキレス腱であるが、人体中で最大の腱であり、足の蹴りの力は全てこいつで伝達されるのだからご苦労さまなのである。そのアキレス腱に伝わる力はふくらはぎで発生している。ふくらはぎ好きな人は昨今のルーズソックスの流行で鉄腕アトムのようになった女の子の足には悲しみを感じているに違いない。(注:私ではない)

その、ふくらはぎも研究の過程で少しかじった私は腓腹筋と平目筋に分けて考えるのである。念を押しておくが、かじったと言っても本当に歯でかじったのではない。腓腹筋というのは、ふくらの表面側にあり、いわゆる、こむらがえりの時につる部分である。平目筋はその奥にあり、形状が魚のヒラメに似ているのである。これらはかかと側でアキレス腱にまとまっているので、まとめて下腿三頭筋と言う場合もある。「ほほう、なかなか良い形の腓腹筋をしていらっしゃいますな。」

かじっても良いふくらはぎは、たいがい、鶏肉である。唐揚げになってるのを良く見かける。愛撫の一環として恋人のそれにかじりつく人もいるらしいが、食べてはいけない。食べると佐川一政氏になってしまう。だから普通はみんな鶏肉を食べる。

ぼくが一時期マクドナルド(関西風に言うとマクド)でバイトをしていたころ、ケンタッキー(同ケンタあるいはトリ。KFCと言う人もいた)に張り合ってクリスマス商戦だけフライドチキンを売っていたことがある。その時、素材に2種類あり、ふとももをサイ(thigh)、ふくらはぎをドラム(drum)と言っていた。形がdrumstickに似ているので、英語でもそう言うらしい。奇数個のオーダーが入るとこの2種類がバランスよく混じるように気を使ってパッキングしていたのを思い出す。

ちなみに、ぼくの実家では、ぼくが小さかった頃、夕食のメインディッシュが鶏のもも肉である時、「今日の晩ごはんは、コッコチャンやで」と言っていた。やきとりや唐揚げでこうは言わなかった。もも肉のローストチキンの時に限って、そう言っていたのである。謎だ。

他人の太股に頭をのせると、それは「ももまくら」ならぬ「ひざまくら」である。これは私の積年の疑問のうちの一つである。女の子の膝頭でも「膝小娘」と言わず「膝小僧」というのも謎であるが、詳細は定かではない。

—MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS—————————————
当時の本 『眠れなくなるお伽咄』立川談志(DHC)師匠が一流の調子でおとぎ話を聞かせてくれる。考えだすと眠れなくなるから考えちゃいけない。


当時の世 職場はCAD端末のせいかすごく暑い。
当時の私 部屋が片づかない。片づけようとすると出てきた雑誌や本を読みはじめるというお約束パターンにはまる。

 

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