Walkmonkey 歩く聞かザル

ウォークマンがすっかり普及して久しい。細かいところを言うと、ウォークマンと言うのはソニーの商標だから、ポータブルプレーヤーとかウォーキングステレオとかいう単語を使う所なのだろう。でも、すっかり普通名詞のようになっちゃったからウォークマンと呼ぶ。ウォーキングステレオと言った所で、妙なもんで、別にステレオに足が生えた訳ではないから、おそらくこれも和製英語である。妙な和製英語よりは和製商標の方がすっきりする。

ステレオと言ってもヘッドフォンで聞いたのでは、音場の中心が頭蓋の中になってしまうので、ライブとは音の来る方向が違う。超音波の焦点を合わせて腎臓結石を破壊するような治療法もあるくらいだから、ヘッドフォンステレオで大音量の音楽を聞いたら、脳髄が破壊されるのではないかと心配になる。

その辺り、ヘッドフォン文化から隔離されている、うちの親に聞かせると、「すごい、頭の中で音がしてる。」と正直な感想をもらす。まるで、コーラのビンを見たブッシュマン、もとい、コイサンマンである。ほとんど関係ないが、大阪弁で「こいさん」と言えば末娘のことである。もっとも、私はこのボキャブラリーをNHK大阪発の連ドラでしか聞いたことがない。

さて一応、彼らよりは文明化したつもりの私も、大音量でCDをかけたら、レーザーの出力も上がってCDが割れるんじゃないかと心配になって、ついスピーカーのボリュームを絞ったり、さらに絞ってヘッドフォンで聞いてしまったりする。おまけに、外で聞く習慣がないので、せっかくウォークマンを買っても据え置き型のシットマンになってしまう。

世の中の人々は私のような人ではないので、結構、耳からコードを垂れて歩いている。「あれじゃ、音で危険を察知できないのではないか」と思うが、耳や目の不自由な人が他の感覚を鋭くするのと同じように、ウォークマン対応の現代人はちゃんと周りの音が分かるのかもしれん。中にはインナーヘッドフォンをしたまま日常会話をこなす人もいる。

ヘッドフォンをしていると、自分の声の大きさのフィードバックが効かず、つい大声になる時がある。授業中にウォークマンを聞いてた奴が、先生に当てられて、本人が気づかないので周りの人が小声で「おい、おまえ、当てられてるぞ」と教えると、思わず大声で「何?」と言ったという事件は何度もあった。やっぱり聞こえづらいのは確かなのだ。

耳の部分が大きなドームになった密閉型のゴツいヘッドフォンをして街を歩く人もいる。冬のイヤーウォーマーを兼ねてるのかもしれないが、たぶん、あれでは外の音は聞こえないだろう。聞かザルである。そういえば、昔、サルがウォークマンの宣伝をしていたなぁ。ウットリと、彼が聞いていた曲は何だったのだろう。

近頃は、ソニーのヘッドバンドが後頭部に来るタイプのヘッドフォンが結構ヒットしてるらしく、通勤途上でもそれをして歩いている人にしばしば出会う。バンドが上や前に来ないので、ヘアスタイルを乱す悪影響が少ないのだろうか。でも何か「気取ってる」感じを受ける。私なんかは小心者なので、あの手のものを買ってもこっそり部屋で使うだけだろう。ん?私の方が変かもしれん。

近頃はヘッドフォンのシャリシャリ音よりも携帯電話に対する迫害の方が強いので以前ほど神経質にとがめられてはいないようにも見える。ヘッドフォンではないけれど、リアクティブに外部の音と位相が反対の振動を起こしてノイズを消すノイズキャンセラーという装置も売ってるくらいだから、ノイジーな社会を無事に生きるためには、耳栓をして、聴覚だけは好みの別世界にリープしないと、つらい世の中になってるのかもしれない。

—MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS————————————
当時の本 『一緒に遭難したいひと 1』西村しのぶ(GIGA COMICS 主婦と生活社, 780円)美しくてかわいくて男前で貧乏で的確なボケツッコミのキリエと絵衣子。マキオくんの天然さ加減もグッド。西村さんの神戸テイストだねぇ。ラブリーでいいです。


当時の世 新井代議士自殺
当時の私 いちおう、毎日、新聞を見てるつもりが、自殺記事でこの人の存在を知った。なんたるノンポリぶり。しかし、その後、この人の発言とか文章とかの抜粋を見たが、なんだかつまらないレトリックで自殺したんじゃなかろうか。雄弁の才能が枯渇したんだな。たぶん。と思った。

 

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