It’s spring!

It’s spring!
う~ん、バネやね~。もとい。春やねぇ~

というのは英語を学びはじめた中学生の頃に使ってたネタなので、ひょっとすると、とうの昔に賞味期限が終わっているかもしれない。

チョウチョウは固いサナギの状態で冬を越す。ちゃんと季節を知っていて、普段なら少しの期間で羽化するところを、冬前にサナギになったやつはちゃんと羽化するのを春まで待つのである。

高校生の女の子も、春になれば、ピーコートやダッフルコートに、バーバリーチェックのマフラーで固めたサナギの殻を脱ぎ捨て、またブレザーやセーラーカラーやスカートの裾をひらひらさせてくれるのだろう。

今年もまだまだルーズソックスは健在のようだ。時代が違えば、もう少し小さめのクシュクシュソックスであったり、三つ折りソックスであったり、ワンポイントの柄に命を懸けていたであろう彼女らが履くルーズソックスは、その名前のわりに、非常に自由度の少ないファッションなのである。ちゃんと膝の下のところで止めなきゃなんないし、適度に弛ませなくてはならない。おまけに色は白だと決まっている、バリエーションと言えば、せいぜい、ゴムがあるか無いかくらいだ。

学校によっては「ゴム無しのルーズソックスは禁止」というトホホな校則によって、帰りの電車の中での履き替えを余儀なくされている子たちもいる。「電車の中で履き替えるなんてはしたないからお止めなさい」と注意したいところだが、なんだかそれも気恥ずかしい。それに彼女ら妙に平然と履き替えている。なんら恥の概念のかけらも感じさせない健全さ?である。

ルーズソックスは「女子高生」という肩書のための身につける名刺、一種の制服になってしまっている。学校で決まってなくてもこれは制服なのである。パソコン業界でしばしば使われるデファクトスタンダードというやつである。

片足をヒョイっと持ち上げて、ソックスの乱れを直す姿はさながら、フラミンゴか丹頂鶴のようである。まぁ鳥にしては妙に太いをしているが…

 俺時々僕ところにより私
俺時々僕ところにより私
http://muccitexi.com/1997/05/12/drumsticks/
I, My, Me

果して高校生の女の子は鳥か蝶々か?『東京女子高制服図鑑』(弓立社)で知られる森伸之は『路上観察學入門』赤瀬川原平ら編(ちくま文庫)の中で「女子高生は鳥類なのか昆虫なのか」という書き出しでその辺りを考察している。氏の観察における2大原則というのがある。ひとつが、「話しかけない、触らない。」もう一つが「写真はいっさい撮らない。」である。それらから、距離感の取り方はバードウォッチングに近いものがあるが、観察したあと記憶を頼りにイラストを起こしたり、周辺資料を調べるのは昆虫の標本を作るのに似ているというようなことが述べられている。

残念ながら、私には絵心がないので、イラストを起こすことはできないので、氏の『東京路上人物図鑑』(小学館)を見て「そうだよなぁ」と感心している。それに、「ってゆうかぁ。あたしってぇ、こう見えてもぉ、意外と気が小さい人だったりするんでぇ。知らない人の? 行動を? 観察するなんてことぉできないですよぉ」なので、せいぜい良く鳴く小鳥さんの面白い声に耳をそばだてることが時々あるくらいである。

森伸之氏の近著『制服通りの午後』には、時代と共にうつろい行く、高校生のファッションの中にあって、なぜ、彼女らの足元はローファーが末永く履かれているのか? といったことに関する調査などが出ていて、大変ためになるような。ならないような。何にしても「森・女子高生学の総決算」な会心の作なので、資料的価値は極めて高いと思われる。

よく見ると、ちゃんと各人の個性があるのかもしれないが、じっと見てたら変態の現行犯で駅長室か駅前の交番に行くことになるので、ぼんやりと、眼鏡もコンタクトもせずに見るのだが、同じようなブリーチのかかったストレートのロングヘアに、同じような細眉。耳には似た感じのピアス。当然同じ制服に、同じようなコートやマフラー。同じ鞄を同じような持ち方をして、何故か同じような丈のスカート(スカート丈がいちばん自由度高いと思うけど、何故かみんなして短い)、足は白のルーズにローファー。喋る言葉は同じような口調。

今は亡き笹川会長の日本船舶振興会のCMではないけれど、高校生の女の子はみな姉妹か? と思ってしまう。

以前は、「何の個性も感じられないなあ」と憤っていたのだけれど、考えてみると、公園の花壇を飛び交うチョウチョウを見て、「違いが感じられないなぁ」と文句を言ったりはしない。同じような模様に安心したりもする。「近頃の女の子は元気があって、よろしおすなぁ」と何故か京都弁風に言って済ますことにする。

でも、雌伏15年の後にデビューしてみたら、世の中の流行りにその容姿を左右されたりして、華やかなのはわずか3年。なんだかセミみたいではかないね。
命短し恋せよ乙女。

—MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS—————————————
当時の本 『生命の記憶[海と胎児の世界]』布施英利(PHP研究所)海辺とは月と太陽の二つを地球上でもっとも感じられる場所だ。


当時の世  近くの薬局が「当分、消費税3%で営業します」という看板をあげている。ここまで堂々と「2%分脱税」を表明していいのか? せめて、どこぞのスーパーのように、「2%OFF」を連呼するに止めんか。
当時の私 話題の『エヴァンゲリオン劇場版』を見た。ここまでオタク向け特別仕様しかも未完な作品を劇場でやっちまうのもまた一興。

 俺時々僕ところにより私
俺時々僕ところにより私
http://muccitexi.com/1997/07/22/the-end-of/
I, My, Me

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