This is “the” 天上天下唯我…

さて、寮から駅に至るまでの道すがら、気になる看板があるのである。そこには、こう書かれている。

ザ・きものサークル

英語でサークルという場合は「~界」って感じの(社交界、文学界など)大きな意味になって、日本語でいうサークルというのは英語だとClubにあたるという話も聞く。それは良しとして、

まぁ分からないでもないが、いわゆる着付けの学校だろう。で、何が気になるかというと、”THE”である。英語で”the”が付くのは、この世でたった一つと限定できたり、あるいは、お話の成り行き上、あなたも私もそれを知っているという前提がある場合なのである。ぼくはこの学校の人と知り合いではないし、どう考えても、この学校がこの世で一つとは考えにくい。(ひょっとすると、町内に限るとOnly oneかもしれないが)ということで、おそらく、これは、余計な”the”であると思われる。とここまで話した後ならtheを付けるのも可。

“the”のネタが出たついでに思い出したのだが、すこし前に『ザ・インターネット』という映画があって、そこらじゅうから、「そりゃ『ジ』やろ。」という突っ込みの集中砲火を浴びた事件があった。ぼくは『スピリッツ』の『気まぐれコンセプト』で見た記憶があるが、おそらく、それ以外に時評もののエッセイやマンガのいいネタになっていたはずである。取り合えずWe Japaneseは中学校で母音の前にtheがつく時は「ジ」と刷り込み行われているので、万人が容易に、この突っ込みを思いつくのであろう。確かあの映画の原題は”The Net”だったと思うが、時の日本はインターネットブーム。本来、間を取りもつだけの実体を持たない存在であるはずのインターネットが、「インターネットする」という妙なサ変動詞と化した時期であった。

ふむ、ふむ、すると、私が幼き頃、テレビにかじりつくようにして見ていた、『ザ・ウルトラマン』は実は『ジ・ウルトラマン』の間違いだったのだろうか。そもそも特撮ものであるウルトラマンシリーズにあって、唯一のアニメ作品であるからして、定冠詞をつけて呼ぶのにやぶさかでない私であるが、なんだか、気持ちが揺らぐのである。ウルトラマンは最近でも「ゼアス」とか「ティガ」とかやってるみたいで、ご本人は時間制限つきなのにしつこいね。

以前、仕事で誰かさんからいただいた名刺の裏には会社名が”THE …”と書かれていた。固有名詞にTHEを付けてまで、やあやあ我こそは、と主張するのは格好悪いのではなかろうか。それとも数あるグループ関連会社の中でわたしこそなのだろうか。

—MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS—————————————
当時の本 『瀕死のエッセイスト』しりあがり寿(角川書店, 1500円)


当時の世 センター試験をやってるようだ。
当時の私 ぼくは最後の共通一次を受けた人である。

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