THE END OF … それは夢の終わり

1997年7月19日 渋谷 14:30

ファッショナブルなこの街の駅から、ぞろぞろと、一目でそれとわかる雰囲気を漂わせた人たちが、ぞろぞろと東急文化会館へと歩いている。

今日は、例のシャシンの初日なのである。午前中の上映では声優さんの舞台挨拶があったという。

「エヴァンゲリオン3時からの回、最後尾になります。4~5列になってお並びください。」
絶叫する劇場職員。声は涸れかかっている。おそらく、朝からこのセリフだけを連呼しているのだ。

Tシャツにジーンズ、背中にデイパック。
不調法に伸びた髪は後ろで束ねている。
缶ジュ-スを片手に、なにやら本を読んでいる。
時々持ち上げる目線はどこを見るでなく睨んでいる。
階段を埋める「出来損ないの群体」

「イヤ」
「あんた見てるとイライラすんのよっ!」
「自分みたいで?」

「この列はチケットをお持ちの方の列です。お持ちでない方は先に窓口でお買い求めください。」
彼は現実の中。

本屋に寄る。近頃の『エヴァ』本コーナーは、『エヴァ』から派生した大量のプロダクツの影響で、タイトルの元になったSFや、本物の死海文書の本はその居場所を失っている。

「…ココにいても、いいの?」

この時点で、シャシンを今日見る気のない私。

視界の中の数ある『エヴァ』本の中で、目の止まる本がある。
『THE END OF EVANGELION 僕という記号』庵野秀明(幻冬社, 1400円)


手に取る。見ようとする。

「ダメ」

なんとなく、これを読む前に、シャシンを見なければいけない気がした。

すぐ隣にある窓口でチケットを買う。階段を下りる。
階段を埋める「出来損ないの群体」
ひどい人いきれ。むさくるしい。

「A.T.フィールド!」
「そう、君たちリリンはそう呼んでいるね」
「何人にも犯されざる聖なる領域、心の光」
「リリンにもわかっているんだろう」
「A.T.フィ-ルドは、誰もが持っている心の壁だということを」

並んで待っているものは「現実の埋め合わせ」

「エヴァンゲリオン3時からの回、最後尾になります。 4~5列になってお並びください。」「朝の舞台挨拶の影響で、上映が20分ほど、おしております。」「3時からの回、立ち見になります。ご了承の上お並びください。」
絶叫する劇場職員。彼は現実の中。

列が動きはじめる。入口で1列に絞られる。入場。

虚構のはじまり 現実の続き それは夢の終わり

 第25話 Air    Episode 25' : Love is destructive.

前半は『REBIRTH』のリテイク。 「はじまるわね」アスカ、「偽りの、再生」やがてくる活動限界。 「ロンギヌスの槍!?」初号機起動。弐号機の惨劇を見るシンジ。絶叫。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 [つづく]

第26話 まごころを、君に One more Final : I need you.

物議を醸した、TV版ラスト2話をストーリーの中で昇華させようという作品である。復元するリリス。現れる「黒き月」映像はシュールレアリスム(超現実)の様相を呈する。  「ぼくの夢はどこ?」「それは、現実の続き」展開するアンチA.T.フィ-ルド。壊れていく自我。溶け合う人々。 「これが、あなたの望んだ世界、…そのものよ。」

「他人の存在を今一度望めば、再び心の壁が、全ての人々を引き離すわ」 「再び、A.T.フィールドが、君や他人をキズつけても、いいのかい?」

「もう、いいのね」 「…うん」「さよなら、母さん」

砂上に横たわる二人。「破滅への憧憬」「分離への不安」嗚咽。嫌悪。

終劇。閉幕。それは、夢の終わり。「金返せ」「ほら、私の言った通りでしょ」「何これ????」「はい、はい、見にきた俺が悪かった。」「なんか凄い…」「やっちゃったねぇ庵野」「何か、イヤ」劇場職員の誘導に頼らず退場する人々。それは、夢の終わり。

強制的な入替が行われないのをいいことに、そのまま、席に座る私。5時からの回の客が入ってくる。

繰り返される87分間。

再び終劇。閉幕。それは、夢の終わり。「金返せ」「ほら、私の言った通りでしょ」「何これ????」「はい、はい、見にきた俺が悪かった。」「なんか凄い…」「やっちゃったねぇ庵野」「何か、イヤ」別の人に繰り返される同じ感想。やはり、誘導に頼らず退場する人々。それは、夢の終わり。

劇場から吐き出される人々。その中の一人の私。モワッと生暖かい決して心地よくはない空気。 「ぼくの現実はどこ? 」「それは夢の終わりよ」

—MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS————————————
当時の本 『THE END OF EVANGELION 僕という記号』庵野秀明(幻冬社, 1400円)劇場版の絵コンテや、セリフのコラージュにより構成される詩篇。なお、上記本文の字下げ部の一部はこの本よりの引用。
『エヴァンゲリオン快楽原則』五十嵐太郎編(第三書館, 1400円)エヴァをめぐる言説のうち、新聞や雑誌に見られた主要なもののコラージュ。真の意味でのアンソロジー(論文集)と編者は言う。


当時の世 傑作かどうかはしらんが、怪作、問題作であるのは確か。
当時の私 ぼくがいなくても世界は続く。ぼくがいないと世界はない。

 

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